黎明のすがたを

2017.10.27|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 KJWORKS

 

『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』   竹田恒泰 著   PHP新書

 

 

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

なかなか刺激的なタイトルですね。でもこれは、常々私が自分自身のことも含めて痛感していることとぴったり符合する言葉だったで、迷わずゲットしました。入手してから知りましたが、著者は旧皇族という出自をもった作家のようです。

 

 

 

そしてタイトルの「日本のこと」とは、現代日本がおかれている状況という意味ではなかった。本書は「日本という国のはじまりを知ろう」という主旨のものでした。即ち現代日本人は、祖国の黎明期についての正しい教育を受けていない。

 

 

 

そう言われてみると自分の知識も確かにおぼつかない。皆さんもきっとそうでしょう。著者はそうした戦後教育の不備を指摘し、それが祖国に誇りをもてない理由であると言います。そこに現代日本人の悲劇があり、今こそ見直すべきだと。

 

 

 

まず、冒頭第一章で私の眼からひとつ鱗が落ちました。私たちは学校で「日本史」を習いますが、そもそもそれが間違いだという。「国史」であるべきだと。確かに「Nation History」自国の歴史ですから、客観的な「日本史」は変ですね。

 

 

 

そして、日本という国が世界で最も古い国家である、即ち「王朝交代」が一度も無かった唯一の古代国家である、ということもあまり認識されていません。「政権交代」とは違う、天皇家がずっと一系で受け継がれている国だということが。

 

 

 

こういうことを書くと、すぐに「右」だという意見が出たりするようですが、現に今も天皇家はあり、歴史の中で変わる政権とは別の国家の主体「朝廷」としてあったというのは事実ですから、そういうことは知っていたいと私も思います。

 

 

 

本書は2部構成になっており、第1部は「日本はいつできたのか」と題して、『古事記』と『日本書紀』を紐解き、考古学などの成果と照らし合わせるかたちで検証していく感じ。古代中国や古代朝鮮の史書の記述も引用されています。

 

 

 

ここでもうひとつ目から鱗。『古事記』『日本書紀』、その存在は多くの方が知っています。ともすれば「非科学的」とされるその内容はしかし、当時天武天皇の命によってつくられた、今で言う「政府の統一見解」なのだ、ということ。

 

 

 

であればこそ、その記述が神話的なものであっても、それは文字のない時代から口伝で受け継がれてきた重要な記録である。なるほど、確かに。いや、今までいかに自分がぼんやりとしか歴史を見ていないのか思い知らされる気分です。

 

 

 

そして第2部はさらに面白い。「子どもに読ませたい建国の教科書」として、中学校の歴史の教科書の体裁をとっているのです。先土器時代から遣唐使まで、著者が第1部で論じたことを素直に子どもたちに伝える、という主旨なんですね。

 

 

 

正直、著者の主張は時に少々断定的になりがちな傾向にあるとも感じました。しかしそれ以上に、教育というものが常に正しいとは言えないこと、そしてそれが人の感性や考え方を大きく左右するという事実を突きつける意義は大きい。

 

 

 

そしてもうひとつ。著者の言うように国を愛し誇りに思う心が弱いことも疑いない事実でしょう。しかし一方で、天皇皇后両陛下に対して普通の国民が普通に抱く素朴な敬愛の心は、今も脈々と生きているではないか、とも感じるのです。

 

 

 

例えば「生前退位」へのtwitter書き込みなど見ているとそう思うし、日本人のDNAに今も生きるその感情は、きっとまた本来の国史への興味にも育っていくはず。楽観はいけませんがそう悲観することもない、そんな読後感の一冊でした。