乖離の表現

2017.11.7|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 KJWORKS

 

『フード左翼とフード右翼 ~食で分断される日本人』   速水健朗 著   朝日新書

 

 

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

これは完全にタイトル買いの一冊でした。ネットではなく、書店で背表紙をみて即決。一体全体なにが書かれているのか!?その興味でゲットしましたが、私も今まで読んだことのないタイプの本で、その刺激を愉しむことができました。

 

 

 

本書の本文一行目はこう始まります。「日本人は食でつながる民族である。」即ち、「国民食」と呼ばれる誰もが愛する食べものの前で、日本人はひとつの民族としてのアイデンティティを感じるのだと。ははあ、そこから切り込みますか。

 

 

 

そこまで断定してよいものか、とは思いますが、確かに戦後日本人皆が同じ方を向いて進んできたとは言えるでしょう。しかし戦後70年、今や食の面での「一枚岩」は既に喪われ、大きな分断がそこに生じている。それが本書の入口です。

 

 

 

そこで左翼と右翼という用語をもちいることでその分断を表現し、ひいては食という消費行動に表れる日本人の政治意識を読み解く、それが本書の主旨です。政治運動ではなく、消費行動における左と右、それはどういうものなのか、と。

 

 

 

私自身、政治思想というものにあまり深い関心はない、というのが正直なところ。なので左翼、右翼というものの明確な定義を自分のなかにもっているとは言えません。改革と保守、共産主義と国粋主義など、非常にアバウトな理解です。

 

 

 

しかし、本書でのフード左翼、フード右翼は、著者が便宜上つけた名前です。要するに「食」のあり方は全く違ったベクトルをもって分断され、引き離されていっており、この呼称はその正反対に乖離した状態を表現するのに、具合がいい。

 

 

 

本書には「食のマトリックス」というのが出てきます。X軸は右が「グローバリズム」、左が「地域主義」、Y軸は上が「健康志向」、下が「ジャンク志向」となっている、ここに色んな食についての「主張」が配置されているんですね。

 

 

 

そして、上記マトリックスで地域主義・健康志向のベクトルを強くもった食の意識がフード左翼と呼ばれます。そこではスローフード、ビーガン、マクロビアン、ローフーディズム、そしてホリスティックといった言葉が語られていました。

 

 

 

私も正直よくわかっていない用語ばかりでしたので、そういう意味ではとてもためになる。そして読み進めていくうちに左翼・右翼という言葉が選ばれた理由も納得できてきます。すなわち、左は革新であっても「一般」にはなりにくい。

 

 

 

コストのこと、サスティナブル(持続可能性)のこと、遺伝子組み換えという技術などとの関係を解くなかで、それらの難しさも見えてきます。なるほど、ジャンクやB級グルメばかりもいけませんが、極端な自然志向もまた危うさを孕む。

 

 

 

話題が多岐に渡って解りにくいところ、また強引さが目立つ箇所もある本です。しかし、日本人に乏しいと言われる政治意識を食という消費から論じるのは面白い。くれぐれも左と右という言葉に惑わされずに読むことをお薦めいたします。