機微を伝えるもの

2017.11.28|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 KJWORKS

 

『オノマトペがあるから日本語は楽しい』   小野正弘 著   平凡社新書

 

 

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

皆さんは「オノマトペ」という言葉をご存知ですか?本書のサブタイトルにもある通り、擬音語・擬態語に相当する言葉で、フランス語だとか。言葉は知っていてもそのジャンルの本を読んだことがなく、タイトルで即決ゲットした一冊。

 

 

 

日本語には非常に多くのオノマトペがあると言います。中でも擬態語の豊かさは他に類をみない、と。「ぷかぷか(浮かぶ)」、「こんこん(と眠る)(と水が湧く)」、「すくすく(育つ)」など、など。どれも素敵な言葉たちですね。

 

 

 

著者は国語史の研究者で、『日本語オノマトペ辞典(小学館)』の編者だそうです。そういう辞典があるというのがまず驚きですが、そこにはなんと4500ものオノマトペが掲載されているという。著者はまさにオノマトペの権威なのです。

 

 

 

本書はそうした辞典のような書物ではなく、タイトルの通り日本語におけるオノマトペの役割、歴史、そしてその楽しみ方を軽快な文章で綴ったもの。口語文が多く、時にギャグも混じって、何度もにやにや笑いつつ読み進められました。

 

 

 

しかし、その中は非常に深い考察も埋め込まれており、元々日本語や漢字という文字に興味がある私も大いに唸らされました。例えば「日本で最も古いオノマトペは何か」という検証を通じた、日本に文字が導入された時代の再現なども。

 

 

 

『古事記』は、漢字の熟語に「万葉仮名」を加えて書かれています。これは漢字から意味を剥ぎ取り、アルファベットのように一文字一音で「表音文字」として使った表記法。そこから徐々に片仮名や平仮名が出来ていくその元ですね。

 

 

 

その万葉仮名で古事記に表記された「許々袁々呂々(こをろこをろ)」が最古のオノマトペではないか、という主張から万葉仮名の解説、そして「形・音・義」という漢字の本質にまで至る考察は、なかなかにエキサイティングでした。

 

 

 

と思えば、ゴルゴ13が煙草に火を点ける音「シュボッ」、同じくデューク東郷が銃を構える音「チャッ」についての考察、川端康成『伊豆の踊子』に登場する「ことこと笑った」から笑いのオノマトペの考察など、非常に面白いものも。

 

 

 

それほど多様な考察が出来るほどに、オノマトペは日本語に深く浸透してその表現を支える重要なもの、という著者の主張には大いに納得。そして読了後、私にはオノマトペと関連して「機微(きび)」という言葉が浮かんできたのです。

 

 

 

これは「心の機微」などと使うように、「表面からは知りにくい微妙な心の動きや物事の趣、容易には察せられない微妙な事情」といった意味ですが、その微妙なあたりを絶妙に捉えて言葉にする、それこそがオノマトペではないか、と。

 

 

 

さらに、固定した意味をもたず、ニュアンスがTPOによってゆらぎ動いていくことこそオノマトペの本質では、とも感じます。普段意識しない、しかし日本語の豊かさを支える擬音語・擬態語、その魅力を楽しく伝えてくれる一冊でした。

 

 

 

最後に質問を。本書には「オノマトペの方言」も色々紹介されています。私が「これは関西弁」と思うオノマトペは「へにょへにょ」で、標準語の「ぐにゃぐにゃ」に近い意味と認識しているのですが、これは関西弁ではないですかね?