生き永らえる形

2017.10.20|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 KJWORKS

 

〈大記録を達成したプロダクトに、ロングライフのよきあり方を観る想いでした。〉

 

 

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

今日は寒い一日でしたね。私も事務所のテーブル下にカーペットを敷きました。それでも寒くて、今年はもうストーブの出動?と思ったくらい。そしてストーブを頭に浮かべた時、昨日Facebook経由で見たニュースを思い出したのでした。

 

 

 

それは、冒頭の写真のモノについてのニュース。皆さんご存知ホンダ・スーパーカブですね。このバイクがなんと、ついに総生産量1億台を突破したという記事だったんです。昭和33年の発売から60年近く、まさに稀代のロングセラー。

 

 

 

スーパーカブと言えば個人所有の他に、蕎麦屋の出前の人、郵便屋さんなど職業用バイクとして永く愛用されてきたイメージがあります。写真を見て、私などはとても懐かしい気分にすらなるのですが、でも実はこれは最新型なんですよ。

 

 

 

それが意外に感じられるほどに、大きなデザインの変化を加えることなく今まで続いてきた、永い寿命のプロダクトだと言えるでしょう。バイクとしての性能だけでなく、そうしたロングライフ・デザインとしてもお手本のような一台。

 

 

 

これで、私がストーブからこのバイクのニュースを連想した理由がおわかりになったことと思います。私の事務所のストーブは「アラジン」で、こちらもまたスーパーカブと同様の、英国のロングライフデザイン製品だからなんです。

 

 

これが私の事務所のアラジン。これも3年前買った時の最新型でしたが、ずっと昔からここにあるような顔をしていますね。こちらは90年の歴史をもっていて、レトロ感あるそのデザインにはスーパーカブに通じるものがあると感じます。

 

 

 

なお、スーパーカブは2014年に「立体商標登録」としてもデザインを登録しています。それほどまでに社会に浸透し、誰が見ても「ホンダのスーパーカブ」とわかる。それはアラジンのストーブも同様ですが、ではそれは何故なのか。

 

 

 

私が思うに、工業プロダクトであっても、やはりそこに「用の美」が存在しているからではないでしょうか。必要な機能、性能を満たすミニマムなかたちであってそこに不必要なものは無く、かつそこには抑制あるデザインが効いている。

 

 

 

強く時代におもねるような「流行り廃り」のデザインなら、それはきっと淘汰されたでしょう。機能という素材でつくる料理に効いたスパイスのような、不可分で渾然一体の魅力をもつデザイン。機能を補完しつつ形を整えるそのあり方。

 

 

 

私の感覚では、それこそ用の美と呼ぶに相応しい。そしてアラジンにもスーパーカブにも、発売当時既にそれがあった。だからこそ時代を経ても変わらず、逆に段々とそれは「アイコン」になり、レトロ感と愛着を感じさせるようになる。

 

 

 

プロダクトである以上、機能の満足がその基本のはず。でも機能一辺倒のモノと比べた時、デザインという行為にはそれを生き永らえさせる力がある。前人未到の1億台となったスーパーカブに、デザインの本当の強さを観る想いですね。

 

 

 

ちなみに、今日はアラジンを出して使うのは我慢しました。寒いとはいえまだ10月、ロングライフの名機は、出した以上は慈しんで使いたいと思うし、それにはさすがにちょっと早いですから。青い炎はあと少しお預けにしておきます。