受け皿の行く末

2017.11.26|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 KJWORKS

 

〈木の保育園が増えるのはいいですが、将来も考えておかないといけません。〉

 

 

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

今年、私がお客さまのお手伝いをしてつくっている「木の保育園」はどれも、「企業主導型保育所」というものです。これは、ある企業やNPOがそこに従事する職員のお子さんを預かる「企業内託児所」と一般の保育園の中間のあり方。

 

 

 

職員のお子さんをあずかりつつ、一般からの園児の受け入れもそのキャパの半分まで可能、というのが企業主導型の保育園で、待機児童問題の解消のため、政府はそういうタイプの保育園をつくることに助成金を設けて奨励をしています。

 

 

 

私もそんな保育園づくりをご一緒しているため、関連ニュースには常に目を光らせますが、このところまた気になるニュースが。そのひとつは、2018年度にはさらに待機児童の受け皿としてこの企業主導型の保育所が増えそうという話。

 

 

 

厚生労働省と財務省によれば、20年度末までに32万人分の保育施設を確保すべく、2018年度には最大2万人の保育の受け皿として企業主導型保育所を増やすとの考え。働き方改革に取り組む企業側と協力して待機児童解消へつなげる、と。

 

 

 

そしてもうひとつは昨日のニュース。上に書いた企業主導型保育所の外部児童の受け入れ枠(5割以内)を撤廃する方向で進んでいるとのこと。待機児童の早期解消のため、従業員専用の定員枠を一般へ開放する、という方針のようです。

 

 

 

 

これは、企業主導型でオープンしながら実際は従業員用定員枠を使い切っていない保育所も多い、という事実をふまえた対応とのこと。確かにこうした柔軟な運営によって利用者の利便性は高まり、企業へも収入源となり得るメリットが。

 

 

 

公立保育所、民間の認可外保育施設につづく、いわば「第3の受け皿」としてこの企業主導型の保育所は想定されていると思います。逆に言えば、事業主体として企業を取り込まなければ待機児童解消への道筋がつかない、とも言える。

 

 

 

私はそのこと自体に何ら異論はありませんし、企業主導型保育所が企業内託児所の延長であるように、いまや働き方を充実させるために「保育」を通じて社員に安心を与える、というのは、非常に真っ当なことであると感じられますね。

 

 

 

ただ、社会の構成員として、あるいは人の親としてはそのことに納得しても、一人の建築屋としては、果たしてそれでいいのか、と考えることもまた事実です。というのは、保育所の建物はずっと必要とされるのか、とも想うからです。

 

 

 

2017年の今は待機児童問題がクローズアップされていますが、おそらくそれは何十年も続かないでしょう。子どもの数は減っていくようですから、いま慌ててたくさんの保育所をつくったとして、それらはいつまで保育所でいられるのか。

 

 

 

そういうことを想う時、建築とは「この用途にしか使えない」では駄目だと強く感じられる。私がご一緒しているお客さまも、「今は保育所だけど、いずれ高齢者施設になることもある」と、そういう視点での運営を考えておられます。

 

 

 

政府としては、社会問題である待機児童の解消を目指すのが「今のベスト」でしょうが、永く使い続けられる建築を目指す私たちとしては、将来に渡って「どんな建物が求められるのか」という視点を失ってはいけない、そう想いますね。

 

 

 

待機児童の受け皿は、今後増える一方の高齢者の受け皿になる可能性も高い。そういうことを考える時、建築がもつ役割の大きさを改めて想いますし、それをつくる自分自身の社会的責任の重さもまた、強く迫ってくる気がするのです。