変革を継ぐもの

2014.12.27|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

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『古田織部の正体』   矢部良明 著   角川ソフィア文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

この本は実はずいぶん前に入手していたのですが、なかなか読めずにいました。でも年の瀬を迎え、いかんいかん、今年中に読んでしまわなくては、と思って読了したものです。

 

というのも今年は、大名茶人古田織部の没後400年にあたる年なのだそうですから。その記念の年に、京都に「古田織部美術館」が出来たり、織部の記念展もあちこちであったようですね。

 

皆さんは「へうげもの」(ひょうげものと読む)という漫画をご存知でしょうか?織部が主人公の歴史物漫画なのですが、現在私が読む唯一のコミックで、現在19巻まで発刊されています。史実という正確性はともかく、なかなか面白い物語ですよ。

 

そのタイトルにもなった「へうげもの」とは、剽軽なものという意味だそうで、織部がつくった「ゆがんだ茶碗」のことを指して言われた言葉です。わざわざそんな茶碗をつくった織部の「正体」というタイトルに、コミックとは別にしっかりと読んでおきたいと思った次第。

 

著者は元東京国立博物館陶磁室長という、古陶磁の専門家。現存する資料が非常に少なく、今なお判然としないこの茶人の姿を、まさに綿密な調査、微に入り細を穿つ資料解析をもって炙り出す、本書はそんな一冊になっています。

 

その師匠である千利休も同様に、遺された資料があまりないようですが、古田織部を語るのに、その利休のスタイルからの脱却というテーマは避けて通れません。織部を語りつつ、そのオリジナルとしての利休にも話が及ぶので、私としてはとても興味深く読めました。

 

内容を一言で書くのは難しいし、是非ご一読いただきたいところですが、読むとやはり織部が利休の後継者であったことは、よくわかります。それは、利休が成した「茶の湯の変革」と、利休のコンセプト「茶の湯にマニュアルはない」という意味において。

 

織部を評した文章に「茶の湯は下手だったが、他に誰もいなかったから成功しただけ」というものもあるそうです。しかし、利休のコンセプトを受け継ぎつつ、さらに万人が楽しめる茶の湯の道具、ファッション性の高い「へうげもの」の創出は、やはり織部でないと出来なかったことでしょう。

 

美濃、伊賀、唐津、各窯の持ち味を活かし、臨機応変にその生産する陶器をプロデュースし、それらを使って茶の湯のスタイルもまた創意していく。そして並行して「武家の茶の湯」というものも整えていく織部。本書の幅広い考察からは、利休から「変革」を継承するものとしての織部の大きな功績が見えてきます。

 

先述の漫画「へうげもの」には、「甲と乙」「一笑」といった用語が織部のコンセプトを表すものとして出てくるのですが、本書を読了して、私はその世界のバックボーンを知ることができた心持ちになったのでした。