小さき者のすがた

2014.4.14|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

虫をめぐるデジタルな冒険

『虫をめぐるデジタルな冒険』   小檜山賢二 著   岩波書店

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日ご紹介するのは、虫のことを書いた本です。それも、「ゾウムシ」という、小さな小さな虫たちのことを。冒頭の写真、この本の表紙にアップで載っているのは、そのうちのひとつです。

 

これは、ニュージーランドに棲んでいるというホウセキゾウムシの一種。なんという美しい色合いでしょうか。その名に違わない、まさに宝石のような素晴らしさ。そして、さらに驚くのは、ゾウムシという虫は、ほとんどが1センチにも満たない小さな虫たちだ、ということです。

 

この表紙の写真からは、とてもそんな風には思えません。でも、顕微鏡写真のようでもない。小さな小さなゾウムシたちを、いったいどうやったらこんな写真が撮れるのでしょう?それこそがまさに、本書のテーマ「デジタルな冒険」なのですね。

 

本書で著者が掲げるコンセプトは「マイクロプレゼンス」というものです。その意を本書から引用しますと「日常的な環境の中に存在する小さなもの、肉眼ではその詳細を知ることができない微細な構造を可視化して、その小さなものの存在を実感させる」こと、となります。

 

その目的は、日常的な視点では全く意識されないレベルの大自然の多様性を理解し、実感するためのツールとなること。本書の言い方だと、「理解・実感するための『窓』を提供すること。」

 

ゾウムシは、生物の中で最も種類の多いグループなのだそうです。今発見されているものだけで、多種多様な形態をもつ6万種が存在しているとか。凄いです。しかし、ほとんどの種が小型であり、肉眼ではその多様性を見ることができません。

 

小形で目につきにくいのに、驚くほどの多様性をもっている。そこが著者の狙い、マイクロプレゼンスのコンセプトにぴったり、というわけです。そしてそこでおこなわれている技術が「マイクロフォトコラージュ」というもの。

 

小さな虫をなるべくクローズアップで写真におさめる時、おのずと「接写」になります。そうすると、焦点の合っている部分が非常に狭くなってしまう。マイクロフォトコラージュとは、膨大な数撮影された接写写真から、ピントの合った部分だけをデジタルコラージュする、というものなんですね。

 

そうしてつくられた「超精細画像」で見るゾウムシたちの写真が、上記のような内容の文章の間に、たくさん掲載されています。そのとんでもないリアリティ。そしてその色、形のバリエーションたるや、もう同じ地球上の生物とは思えません。まるでエイリアンのよう。

 

でも、どの写真もとても美しい。小さな命も、さらに微細な構造の集合体であるということが、とてもよくわかります。そしてそれは、普段目にすることができないもの。まさに、「生命の驚異」の一言です。

 

著者はこの二次元の精細画像からさらに進化して、三次元モデル、そしてアニメーション映像へと、さらに進化を進めているところだそうです。このゾウムシたちが動き出したら、それはものすごいインパクトでしょうね。

 

小さい頃に見ていた「図鑑」の写真とは全く違う、デジタルな技術を駆使した超精細な立体画像。この歳になって、子供のころのあのワクワク感がまた味わえるとは思いませんでした(笑)。

 

私と同じように、むかし昆虫図鑑を読みふけったことのある方には、特におすすめしたい一冊であります。あ、間違っても、虫嫌いの方はお読みになりませんように。