旬と鮮度の文化

2014.11.27|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

2014-11-27 12.52.47

『青魚 下魚 安魚賛歌』   髙橋治 著   朝日文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

『風の盆恋歌』という知られた名作(私は未読ですが)の作者によるエッセイ。これまでも『ささやき歳時記』、『くさぐさの花』、『木々百花撰』などを読んできて、すっかりファンなのです。

 

その自然や植物への想い、造詣の深さを、それを詠み込んだ俳句と並べつつ語る著者ならではの文章は、なんとも言えない味わい深さ。その氏が「旨い魚」を語るというのですから、昨今日本酒党である私としては、これは見逃せません。

 

千葉に生まれて釣り歴も長く、根っからの魚っ喰いだと自称する著者は、本書ではそのタイトル通り、鯛などの高級魚でなく鯖、鰯、鯵などの青魚を主役に抜擢しています。

 

その訳は、氏の言を借りると「味の深さ、姿の美しさ、値の安さなど、あらゆる好条件が揃っているのに、不当に冷遇されていると思うから」。何でこんなに旨いものを下魚扱いするのか!というわけですね。

 

本書は、その素晴らしい青魚たちと、その素晴らしい調理法をビジュアル満載で紹介した一冊というわけ。上記の三種類の魚以外にも、サヨリ、鰊(ニシン)、カマス、ボラ、果てはシイラまで、たくさんの魚がその旨い食べ方を紹介されています。

 

本書は1988年に単行本として出たもの。雑誌「クロワッサン」への連載だったようです。今から四半世紀前のその文章に一貫していることは「旬を味わえ」ということ。その大切さは今も変わりませんね。そして養殖魚はかなりキツい調子で糾弾されています。

 

その旨い時季に、鮮度よく食べれば、青魚だって鯛に負けない素晴らしさを味わわせてくれる。それを楽しむ暮らしを、そして日本各地に残るその旨い調理法という食文化を、失ってはならない。そう著者は訴えているのですね。

 

私は元々鰯や鯵や鯖が好きです。なのでこの本を読んでいたらもう、矢も盾もたまらなくなってしまいました(笑)。先日も帰りの電車で読んでいて、そのまま青魚を食べさせてくれそうなお店へ直行!となった次第。

 

鯵のお造り、鯖のきずしに舌鼓を打ちつつ、思いました。時季と鮮度、そして用途によって、その調理法を工夫すること。それは素材が何であれ同じですが、こと魚において、日本人はその技術を歴史の中で磨きぬいてきたんだなあ、と。

 

最近めっきり脂っこいものが苦手になり、魚の旨さを再発見しつつある私には、今後の食生活のよき知恵袋になってくれそうな一冊でした。著者のエッセイ、さらに好きになったのです。

 

ちなみに、それぞれの料理を美味しく食べさせてくれるお店や宿も紹介されています。情報が古いですが、きっとそんなお店は今も魚っ喰いに愛されて、旬と鮮度の食文化を守り続けていることでしょうね。