本屋にいる時間

2014.2.24|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

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『街を変える小さな店』   堀部篤史 著   京阪神エルマガジン社

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

「恵文社 一乗寺店」の店長が書いた本。表紙にもしっかりそう書いてあります。タイトル、サブタイトルに惹かれて入手しましたが、残念ながらこの店にまだ私は行ったことがありません。

 

恵文社は、本屋さん。一乗寺と言えば、出町柳から叡山電鉄でいくところですね。「京都のはしっこ」と著者が書くその店はしかし、いわゆる「町の本屋」からずいぶんと逸脱した存在らしく、知る人ぞ知る店、のようですよ。

 

本書はそんな書店の店長が、自分の店づくりでやってきたこと、やりたいことを描きつつ、その仲間の店、お手本となる店、個性ある活躍をしている店、をいくつか紹介したものです。

 

それは同じ本屋、喫茶店、居酒屋、レコード屋、アンティーク、などなど。京都限定で、というか著者の行動範囲の中で選ばれた店たちは、やはりこの店長のお眼鏡に叶うだけあって、ひと癖あるものばかり。

 

いまや、ネットショッピングでたいていのモノは買えてしまう時代です。でも、この本で描かれた店たちに共通するのは、「その店にいる時間」を買いに人が来るということ。そう私は感じました。

 

そう言えば、居て楽しい本屋って、本当に少なくなったなあ。私もあまり本屋に行かなくなりましたね。欲しい本が決まっている場合、Amazonより楽なものはありませんから。でも、本屋に居る時間が楽しいということ、昔は味わえていたような気がします。

 

そんなことを思いつつ、先日別の用事で京都にいたとき、ほんとうに偶然、本書に「学びの場」として取り上げられている「三月書房(さんがつしょぼう)」に出くわしました。もちろん初めてです。

 

「宇宙」とまで表現されていたその店内。おそるおそる入り、ぎっしり詰まった棚の中身をしばらく物色して、その意味がよくわかりました。それは、素晴らしい「本屋にいる時間」が得られる店でした。

 

小さな本屋です。でもそのラインナップは、大手書店では見つけられそうにない本ばかり。どの本も目に飛び込んでくるし、しかもどれも隣にある本と「類似」ではない「つながり」をもっている。それが店主の目利きによるものだということが、棚を見ていてわかるんです。

 

本書「街を変える小さな店」の著者も、ながく三月書房詣でを続けているといいます。私も三月書房と出会ったことで、この本が言おうとしていることが、とても腑に落ちたような気がしました。

 

小さくても独自の宇宙をもつ店は、「便利」でない価値を求める人に愛される。そんな店がたくさんある街は、人を惹きつけてやみません。それは、そこでの過ごし方が「時間の短縮」ではなく「時間の濃縮」だから、なのでしょうね。