歴史がうごく理由

2014.11.17|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

2014-11-17 20.29.50

『日本史の謎は「地形」で解ける』   竹村公太郎 著   PHP文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

京都が日本の都となったのはなぜか。源頼朝が、狭く小さな鎌倉に幕府を開いたのはなぜか。関ヶ原の戦いに勝利した家康が、すぐさま江戸へと帰ったのはなぜか。このような「謎」が、日本史の中にはいくつも存在しています。

 

従来それは、歴史の専門家によって推理、想像されていました。しかし、それでは発見できない理由がそこにはある。著者の主張はそこに凝縮されます。いや、日本という国がもっている「地形」を視点に据えれば、それらの謎はするすると解けていくのだと。

 

著者はまさに、気象や地形という分野の専門家。本書は、地形や気象といった観点から日本史を見ることで従来の定説がひっくり返るという、一種の爽快感をもった一冊なのです。

 

理系の中でもかなり専門的といえる分野の著者だからでしょうか、その文章はあまり流麗とは言えません。特にこの前に浅田次郎を読んでいた私にとっては、かなり読みづらい文章でした。

 

しかし、まるで箇条書きのようなその文章をもってしても、その内容のもつ圧倒的な力が、ひしひしとこちらへ伝わってきます。いや、このような歴史の見方があったとは!

 

例えば、私たちの住む関西は、江戸へと移るまでの日本の都をもっていました。奈良と、京都です。奈良から京都へ、京都から江戸へ、大きな規模で言えばこの国には二回の重大な遷都があったのですが、でもそれが「何故」おこなわれたのかを合理的に説明した文章に、私は初めて出会いました。

 

その理由(であろうとの推理)も本書には書いてあります。ネタバレはいけませんが、ヒントで言うなら、私たちKJWORKSが関わる「木造建築」もその答えのひとつなんですね。

 

そういった、教科書には全く書かれない「歴史が動く理由」が、地形というファクターから解説される。理系の建築畑を歩んできた私にとって、これほどまでに「腑に落ちる」日本史の本は初めてです。

 

人間はその土地に生きています。その国の地形に寄り添って、その国の文明は発達していきます。ですから、こういう気象で、こういう地形で、こういう自然現象が起こるから人間はこうしたのだ、そういう説明は、何よりの説得力をもつのですね。

 

よく考えてみれば、学校で習うような歴史に、その視点が欠けていることのほうが、不自然に思えてきます。それほどまでに、「地形」と人の営みとは密接に結びついている。それをこの本は鮮やかに示してくれています。

 

実はこの本、三冊シリーズになっている一冊目です。この後「文明・文化編」、「環境、民俗編」と続いていて、いま私は三冊目を読んでいるんですよ。

 

日本史が好きな方にも眼から鱗となるに違いない、発見の連続。なんともエキサイティングな知的興奮を与えてくれるシリーズだと思います。