江戸から続くもの

2014.4.5|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

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『歴史の読み解き方 ―江戸期日本の危機管理に学ぶ』  磯田道史 著  朝日新書

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

私の読書の一大テーマに「江戸」というのがあります。明治以降今に至る文明のあり方とは全く違う、江戸時代の日本をより深く知ることで、今の時代を客観的に考えてみたい、そんな思いがあるからです。

 

江戸時代と今、例えばエネルギー事情が全く違います。まず「電気」がありません。太陽エネルギーから生み出されたものだけで生活が成り立っていた時代、その省エネかつ超リサイクル的社会のあり方は、とても刺激的ですね。

 

本書もそのような動機から入手しました。映画にもなった『武士の家計簿』の作者で歴史家の著者と聞いて、どんなものかと興味津々で読み始めましたが、私の予想とは少し違う、でも非常に役立つ内容でしたね。

 

どちらかというと、江戸と今の違いという視点ではなく、江戸時代に出来上がり、そのまま現代日本にまっすぐつながっている社会のあり方、日本人の行動パターン、といったものの話から本書は始まります。

 

「組織」や「政治」についてもそれは論じられますが、私が興味深かったのは、「人を殺さない日本人」はなぜ生まれたか、というテーマでした。ここではそれが「治安文化」という言葉で語られています。中世と近世の日本人の意識が移り変わる様が、よく理解できました。

 

さらに色んなテーマが扱われています。「江戸時代の藩による教育の違い」とか、「歴史に学ぶ地震と津波」などなど。どれも、古文書を読み込み、確かな裏付けの元に論じられているので、非常に説得力があります。

 

読み終えて、そのタイトル『歴史の読み解き方』という言葉は、ちょっと違うと感じましたね。むしろサブタイトル『江戸期日本の危機管理に学ぶ』の方がよく内容が伝わる感じです。『歴史が語るもの』というようなタイトルがよいのでは?と思った次第。

 

いずれにせよ、フィクションではない史実が我々に語りかけてくるその豊かさ、そのエネルギーは、いまの日本社会が陥っているかもしれない穴の中を照らしてくれるようです。江戸という時代の、また新しい見方を教えてくれる良書ではないでしょうか。