神と祖母に出会う旅
『白洲正子の宿題 -日本の神とは何か』 白洲信哉 著 世界文化社
ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。
白洲信哉さんシリーズ、第4弾です。これは、2006年に「家庭画報」紙に連載されていたものをまとめ、加筆・編集した一冊。タイトルに「宿題」とあるのが気になって入手しました。
読むとそれが何なのか、よくわかります。著者は祖母である白洲正子の旅に同行して、日本のあちこちでカミやホトケに出会ってきたのですね。そして祖母を失った時、そのいくつもの想い出という点を線につなぐことを求めたのでしょう。
本書はそのための著者の「日本の神をめぐる旅」の記録です。宮崎は高千穂の「神楽」から始まり、出雲、奈良の三輪山、壱岐、白山、沖縄、那智と、その「聖地」を訪ねる旅は日本全国に及んでいます。
山そのもの、巨樹そのもの、滝そのものが神である。日本はそんなカミのあり方をもつ国であり、そのアニミズムを芯として、外国から伝来した他の宗教をうまく馴染ませてきた。そんなことが書かれています。
仏教も、その「日本的なもの」に絡め取られて、日本特有のものとなった。カミとホトケの同居、ふたつの世界の交わりすら許すこのおおらかな多神教の世界。各地に遺るその素晴らしい多様性を語る文章は豊かで、そして写真たちはとても美しいのです。
明治政府による神仏分離、天照大御神を頂点とする一神教に近い神道の考え方によって何が失われたのか。そして、なお今も営々と受け継がれている古来よりの信仰の姿とはどんなものか。
それを、改めて全国を巡り、祖母の著作と重ねあわせてみて、そしてそれを、今の自分の言葉で紡ぎなおすこと。それこそ、白洲正子が著者に遺した宿題だったのですね。
一年間の旅を通して、著者は白洲正子にもう一度出会ったはずです。
その想いが込められているからでしょうか、今まで読んだ他の著作とは文章の気迫が違う。祖母の宿題に真っ向から挑んだ、白洲信哉渾身の作だと感じました。