規則とアレンジ

2014.3.28|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

2014-03-28 10.57.46

 

『木をかこう』  ブルーノ・ムナーリ作 須賀敦子訳  至光社

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

先日この書評ブログで『おおきな木』を採り上げた時、芦屋の家具店・Jqualiaの松下さんから教えていただいた本です。早速ゲットして、じっくり楽しみました。

 

作者ブルーノ・ムナーリの名は、美術家、デザイナーとして私も知ってはいましたが、こんなに面白い、今まで他に見たことのない絵本をつくっていたとは!一読して驚き、そして感動しました。

 

タイトルの示す通り、この本は「木の描き方」を書いた本です。冒頭の写真にある表紙の絵から、なんとなく伝わりますでしょうか、「木には基本的な規則がある」ということが。

 

その規則はとても単純なもの。たとえば「枝が2本に分かれ、別れるごとに細くなる」。それを守れば木が描ける。分かれる数が3だったり4だったりすると、違った種類の木になる。そんなことが書いてある本なんです。

 

でも、その規則は同じでも、本当にたくさんの種類の木があり、それぞれの個性があります。本質的な規則がまずあり、それを守った上でのアレンジによって、無限のバリエーションが生まれるのですね。そのことが、たくさんの木の絵を通じて語られています。

 

どこも面白いのですが、私の目から鱗が落ちたのは、次の主張でした。「2本に枝分かれしていった木の枝の広がりを扇子のように閉じたなら、枝の数と太さの総和は、常に幹と同じではないか」というのです。

 

こういう見方をこれまでしたことがありませんでした。なんという自由な発想、そして生命の本質を掴んだものの見方でしょうか。これだけでも、この本を読んだ価値があると感じましたね。

 

本質を把握し、バリエーションを楽しむ。木の描き方を書いていながら、創造性とはどんなものか、それが伝わってくるようです。また、木の描き方を書いていながら、それは「人の個性」について述べられているようにも感じられます。

 

ムナーリはきっとそんなことを念頭に置いて書いて(描いて)いたのではないでしょう。きっと感じるがままに筆を走らせたに違いありません。自由に、楽しく。

 

でも、その透徹した眼には、とても素晴らしいものごとの「芯」が見えている。本書は、そんなムナーリの眼差しを楽しむ本と言えるのかもしれません。