詩と科学

2015.5.27|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

『ドミトリーともきんす』 高野文子著 中央公論新社

『ドミトリーともきんす』   高野文子 著   中央公論新社

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日採り上げる本は、漫画です。私は、ごく限られたものしか漫画は読みませんが、本書はその中の一人である超寡作の作家、高野文子女史の最新作です。

 

恐るべき寡作であり、そしてファンであるが故に、新作が出たことを何かで知れば、内容は問わずゲットします。それでも買ったのは10年ぶりくらいでしょうか。

 

今回もタイトルから内容は全くわかりませんでしたが、読んでびっくり、そのテーマは科学(サイエンス)でした。高野文子の著作の中でも初めてではないでしょうか。私には最高に興味深い一冊です。

 

ドミトリーともきんすという小さな下宿屋さんに、4人の学生さんが住んでいる、という物語。寮母のとも子さん、娘のきん子さんと、それぞれの学生さんたちとの交流が描かれるのですが、そのメンバーがすごい。

朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹の4人です。

 

全11話。それぞれの話は5ページほどの短い漫画なのですが、一話一話に、若き日の科学者たちがしていたであろう思索から、高野文子が感じ取ったものが詩情豊かに表現されています。

 

この、独特の詩情というか、単なるストーリーや劇画性を超えたところにある、穏やかで柔らかい過激、というような感性が高野文子の魅力だと私は思います。今回はそれが科学と結びついた。

 

読むとよくわかるのですが、科学というものもその本質は「詩」であり「花」であると、ここに登場する4人の偉大な科学者たちは考えていたのでしょう。高野文子はその素晴らしい業績と感性をそれぞれの著書から感じ取り、彼女の世界でくるんで絵にしている。

 

そう、本書は日本が生んだ稀有な科学者たちの業績を、もっとわかりやすく知ってほしいし、それが感じられる著書もあることを知ってほしい、そんな想いを込めた著書紹介、書評の意味ももっているのですね。

 

今回のタイトル「詩と科学」は、本書から感じた私の言葉でもありますが、これは湯川秀樹による文章の題でもあります。最終話では、この文章に漫画が添えられたお話になっている。それはもう、本当に素晴らしい。

 

私もこの本を入口として、それぞれの「科学の詩」を渉猟する旅に出ようと思っています。

 

最後に、朝永振一郎による子どもたちに向けた言葉を。

 

ふしぎだと思うこと  これが科学の芽です

よく観察してたしかめ  そして考えること  これが科学の茎です

そうして最後になぞがとける  これが科学の花です

朝永振一郎