贅沢な読書

2014.5.2|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

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『白洲家の流儀』   白洲信哉 著   小学館101新書

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

白洲次郎と白洲正子、この夫婦のそれぞれの生き方に共感する人が増え、色んな本が出版されてきていますね。私も骨董をはじめとする「日本の美」についての白洲正子の文章が好きで、何冊も著書を読んできました。

 

この本の著者、白洲信哉氏は、その白洲夫妻のお孫さんです。歳は私よりも二つ上。父親が白洲方、そして母方の祖父はあの文芸批評の泰斗、小林秀雄。すごい遺伝子を受け継いでいる人物なんです。

 

それを知って本書のタイトルを見ると、何となく内容が想像できますね。本書は著者がその両方の祖父母の生き方から得たもの、自分に受け継がれているものについて、たくさんのエピソードを交えて描いた一冊です。

 

特に白洲正子と一緒に「運転手」としてたくさんの旅に同行してきたことは、著者の人生に多大な影響を与えたようです。一時は細川護煕の秘書として働いた経験ももちながら、現在はイベントプロデュースや分筆を通じて、日本の伝統文化に携わった活動のご様子。

 

白洲夫妻にせよ小林秀雄にせよ、その身内にしかわからない「日々の様子」には、好きであればやはり興味があるもの。私もそんな思いもあって本書を手に取りましたが、読んでみて「やはり」という感じでした。

 

そこには「好き」を突き詰めること、「本物」を観ること、自分だけの「もてなし」、子供と大人、そんなことについての白洲家、小林家の流儀が描かれています。そこに一切の「ぶれ」がないことが、読むとわかります。

 

白洲正子は、自分の著書に必ずサインをして、信哉氏にくれたそうです。また、小林秀雄は著者にこう言ったそうです。「(本は)何回も読み返していると、その年代によって感じることも違う。一冊の本で何度もいいことがあるんだから、これほど安いものはないじゃないか」と。

 

私が本書を読んで、心底「羨ましい」と感じたのは、そんな祖父母との思い出をもっているだけでなく、著者は白洲正子、小林秀雄の著作を通じて、今は亡き祖父母と「対話」をすることができる、ということです。

 

旅の先々で、そして歳を重ねつつ、何度も、何度も、最も身近であった祖父母が書いた本を読み、その生き方、感じ方を追体験する。そしてその対話の中から、自分自身のあり方を見つめなおしていく。

 

こんな贅沢な読書の仕方は、ちょっと他には考えられませんね。きっとそんな繰り返しの中で、著者の生き方が定まってきたのだろう、そう思われます。

 

私も、著者ほどの深いものはなくても、ここに描かれたエピソードたちから見える白洲正子の姿と、今まで触れてきたその文章とのつながりの糸から、また新しくなにか感じられるものを見つけていきたいと感じました。

 

もちろん、白洲信哉氏自身の著作としても楽しめるものですから、本書を含め一気に5冊入手した次第。「本を関連づけて読む」という少し贅沢な読書、私もしばし楽しんでみようと考えています。