やわらかな指南

2015.7.28|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 山口敏広

2015-07-28 14.10.26

『礼儀作法入門』   山口瞳 著   新潮文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は「芦屋KJ文庫」の蔵書から、時々読み返したくなる一冊を採り上げましょう。サントリー宣伝部出身の作家、山口瞳による本書は、そのたびに何かを私に教えてくれるんです。

 

これを読み返したくなる時、それは私の周りに「礼儀知らず」だと思える人、そんな出来事が続いた時です。その人を責めるのは簡単なのですが、そこで逆に自分を省み、己の鏡とするために本書を手に取ります。

 

本書は、作法入門ではなく礼儀作法入門であることがポイントです。「作法」「やり方」を教えてくれる本は世に数多あり。しかし、礼儀とは何か、というところから始まる本はあまりないでしょう。

 

しかも、山口瞳という作家が「自分の思う」礼儀を説明するのですから、これは氏の「礼儀作法論」であるわけです。それを楽しむ気持ちで読まないと、単に教示を仰ぐつもりでは、何も面白くない。

 

本書では、第一部「礼儀作法とは何か」でその総論、礼儀というものの山口瞳流の定義を語り、第二部「礼儀作法入門」では、色んなシチュエーションでの礼儀作法、著者が考える「良い作法」とその理由が描かれます。

 

それが、どの項目をとっても実に面白い。それは著者が経験してきた色んな事例を挙げ、色んな先達から聞いた至言を挙げ、そして著者の到達した思想を述べているからなのですが、そもそも項目が面白いのです。

 

第二部の項目は全部で24あるのですが、例えば「ギャンブル」、「通勤電車」とか、「酒場についての知恵」、「別れかた」などという項目がある。その項目の礼儀作法って?と思いますが、これが山口瞳流なんですね。

 

私も、己の鏡とするなどと言いながら、実はこの痛快な礼儀論を楽しんでいるというわけ。どれを読んでも、途中にやにや笑いが浮かびながら、でもやっぱり「なるほどなあ」となる。流石です。

 

軽妙洒脱な文章で、一見くだらないエピソードも多いようで、でもそれはやはり山口瞳のつくる世界なんですね。おカタい「礼儀」を柔らかく指南してくれている。今回久しぶりに再読して、それが以前よりよく伝わってくるようでした。やはり年齢でしょうか(笑)。

 

山口瞳といえば「居酒屋兆治」が映画化もされて有名ですが、私はエッセイのような指南書のような本書が、とても好きです。文体と内容がよく合っていて、散りばめられた金言も素直に心に入ってくるから。

 

なので、今回はほとんど内容について触れていません。皆さん、是非ご一読下さい。ニヤリとすること請け合いですよ。

 

そしてもう一冊、サントリー宣伝部を描いた「やってみなはれみとくんなはれ(開高健と共著)」も、合わせて皆さんに強くお薦めする次第です。