呼び名の変遷

2017.9.27|カテゴリー「読書つれづれ」|投稿者 KJWORKS

 

『名字と日本人 ~先祖からのメッセージ』   武光誠 著   文春新書

 

 

 

「本を広げたかたちは、鳥のかたち。」

ご愛読、ありがとうございます。暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

日本で最も多い名字は「鈴木」と「佐藤」だといいます。しかしここ関西では、鈴木さんも佐藤さんも多いとは感じません。どちらかと言えば田中さん、山本さんがとても多い?そんな素朴な疑問から、名字には個人的に興味がありました。

 

 

 

そして今回、そんな疑問に答えてくれそうな本を見つけたので即刻ゲット。期待して読み始めましたが、進むにつれ「名字」がもつ非常にややこしい歴史や経緯がわかってきて、これは一筋縄ではいかんぞ、と。結構苦労してなんとか読了。

 

 

 

まず、日本人の名字は約29万種類もあるのだそうです。それにまずびっくりですが、中国や西洋にはこんな数の名字はないとか。そういう現状に至ったのにも、やはり「名字」がどう成立してきたか、その経緯が深く関わっているのですね。

 

 

 

本書は非常に詳細にその歴史へと分け入っていきますが、それを全てご紹介はできません。しかし、最初にこういう重要な設問があります。「(氏名の)氏」、「(姓名の)姓」、「名字」、「苗字」という4つの言葉の違いとは何か?

 

 

 

現代ではこれらは同じ「個人名の上についている家の名」という意味ですが、そもそもは全く違うものであったのだそう。それが今ある名字の成立の経緯を解き明かす鍵ともなっており、そしてその源流は中世へと遡るというのです。

 

 

 

「氏(うじ)」とは元々古代の豪族たち、それも中央の支配層を指すもので、例えば「蘇我氏」「物部氏」など。それに対して「姓」とは、天皇によって支配されるもの全てが与えられる呼称で、「朝臣(あそん)」「連(むらじ)」など。

 

 

 

「名字」の「名(みょう)」は「領地」のことで、名字とは本来は「領地の地名」。対して「苗字」とは「出自を表すもの」という意味で、全然違うんですね。そして中世においては「名字」が、江戸幕府では「苗字」が使われていたとか。

 

 

 

歴史が下るにしたがい、その時々の様々な支配者と被支配者の営みがある中で、これら4つの呼称が時には厳格に守られ、時には乱雑に入りみだれ、時には淘汰されていき、その結果が現在の29万もの種類をもつ名字へと拡散していった。

 

 

 

本書の主旨はその変遷の追跡であり、上記に興味を覚える方には大いにお薦めです。でもそうでなくても、「鈴木」「佐藤」をはじめとする多くの名字の由来や経緯も書かれていて、こちらは皆さん気になるところではないでしょうか。

 

 

 

ちなみに私の「山口」は、山の麓でまつりをおこなった家の名字だそうで、それは「山本」も「山下」も同じだそうです。そして、佐賀県で最も多い名字が「山口」だと書かれていました。あとは各県にある「貴少姓」についても。

 

 

 

自分の家の「名字」や「家紋」、その由来や経緯を詳しく知っている人は現代ではごく少数だと思います。人の呼び名の源流と変遷を知り、そこから自分のルーツについて想いを馳せるというのが、本書の一番の効能かもしれませんね。