ふるさとの生活

2013.4.29|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

『ふるさとの生活』  宮本常一著  講談社学術文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

民俗学者、宮本常一が、子どもたちに向けて平易な文章で書いた本です。彼が子どもたちに彼が伝えたかったもの、それは「日本人の生活の歴史」でした。

 

学校で習う「歴史」というものは、そのほとんどがその時代の「政治」や「経済」のあり方であって、その時代のごく一般的な庶民がどう暮らしていたか、ということは、ほとんど話題にされません。

 

著者はそれに異を唱え、自分の「ふるさと」に関して、あるいはそこでのご先祖の生活についての理解を深めることが、子どもの人間形成にとって如何に重要であるかを、一貫して主張してきたといいます。

 

そのために著者は、日本全国をくまなく歩き、フィールドワークを展開しました。そして庶民の暮らし・文化・風習・伝統を採集してきました。それらの図説を多く交えて語られるこの本は、子どもたちだけでなく、我々今の大人の目からも鱗を落としてくれるものです。

 

ちなみに今日私は、箕面市の「萱野(かやの)」という場所を通ったのです。そこにはLIXILの新しいショールームが出来ているから、なのですが、この萱野という地名が、この本に出てくるんです。

 

萱野とは、かや葺き屋根のための「カヤ」を、地域の皆が共同で栽培していた場所、のことなのですね。昔は「結(ゆい)」と言って、金銭授受のない共同体内の相互扶助による共同作業がありました。屋根のカヤの葺替えもそのひとつで、屋根を葺くためのカヤを育てる場所が必要だったんですね。

 

そんな風に、庶民の普段の生活が、地域によって、時代によって、どう違うのか。あるいはどう変わったのか。それを膨大なフィールドワークから導き出して、わかりやすく子どもたちへと伝える。そんな大きな意義のある書物だと言えましょう。

 

宮本常一が描いた「ご先祖さまの暮らし」。今はもう喪われたそれらは、このような貴重な記録を通じて、後世に残されます。「暮らしを実現する」ことを家づくりの中心として考える私たちにはなおさら面白いものなのですよ。

 

この100年で人々の暮らしがいかに極端に変わったのか。本書を読めば、そのあまりの違いに驚くこと請け合いであります。