付かず離れず

2014.1.21|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2014-01-21 12.25.36

 

『松山趣味 -人生を愉快にするモノたち-』  松山猛 著  NHK出版

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

松山猛さん、皆さんご存知でしょうか?私はこの本を買うまで、お名前を不勉強にして知りませんでした。作詞家、ライターとしてとても著名な方で、私より上の世代の方なら、フォーク・クルセダーズやサディステイック・ミカ・バンドの作詞家と言えば、おわかりいただけるかと思います。

 

名曲「タイムマシンにお願い」のあの軽妙洒脱な歌詞は、私にも印象深いもの。それをつくった人の本、ということで、ある方の書評を読んだのをきっかけとして購入したのが本書です。

 

サブタイトルが示す通り、生活の中でのモノについてのエッセイです。それも、著者が今まで選んできた、あるいは慈しんできた、「手仕事による本物」がたくさん扱われています。

 

これも知りませんでしたが、氏は時計についての雑誌連載もずっと続けておられるのだそうですね。本書を読むと、時計に限らす、モノへのひとかたならぬ愛情を注いでこられたことが、強く伝わってきます。

 

といっても、いわゆる「オタク」的なマニアの雰囲気は、この本のどこにもありません。「タイムマシンにお願い」の歌詞のように、とても軽妙洒脱な文章で、モノとの関わりが描かれているんです。

 

どんなジャンルのモノにも、それぞれの深い世界があるはずです。そしてそれに完全に浸りきってしまうと、もう他のものは見えなくなってしまう。オタクと呼ばれる方はそういう感じなのではないでしょうか。

 

しかし、ここで述べられている松山趣味に感じられるのは、充分な知識と愛情をもって、しかも浸りきることのない感じ、と言いましょうか、モノと付かず離れずの、上手なつきあい方です。

 

それはまさに、「手仕事による本物」に相応しい、大人の態度ですね。私は本書に、その素敵なお手本を見る思いがしたのでした。

 

最後に、少し長いですが、著者による本書の紹介(1999年刊行です)を引用しましょう。

「この20世紀末という時代は、人間の美しき特質であった、多くの手仕事の良さが消えつつある時代のようにも思える。合理化や大量生産によって、物が安くなるのはけっこうなことだが、それによって物の本質が失なわれるのは、文化にとって不幸な事だと思われる。昔の時代を少しは知る者として、本物が持っていた味わいを、伝えてみたいと願う。」

 

そう、この「味わい」が、この本のどのページにも、香るがごとく溢れているのですよ。