動きのスケールを描く

2014.7.22|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

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『本間至の住宅デザインノート』   本間至 著   エクスナレッジ

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日はめずらしく、志事がらみの本を採り上げました。こんなに素晴らしい住宅設計の本があることを、皆さんにお伝えしたくて。これは、私が尊敬する設計者、本間至さんの著書です。

 

今までにも住宅設計のプロ向け、一般向けに何冊かの本を著しておられる本間さん。しかしこの本はその中でも極めつけに美しく、また手間隙がかかっている本だと思います。

 

表紙に載っているイラスト、図面を見ればその素晴らしさは一目瞭然。それらの全てが手描きであり、完成予想図のイラストは着色の施された美しく、しかも温かみの感じられるものばかりです。

 

少しだけ、内部もご紹介しましょう。いかがですか?間取りや室内の姿図、そして非常に細かいディテールに至るまで、それぞれの絵できめ細やかな検討がなされていますね。これが、A4版で240ページも!

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見開きごとにまとめられた内容で、氏の頭のなかでこの空間がどのように構想され、その細部が徐々に煮詰まっていくのか、それを感じることができます。それが理解できるプロであることに感謝したくなるほど、本当に素晴らしい内容なんです。

 

氏はこう言います。「私は図面を描きながら考え、そしてさらに描くことで次の発想が生まれる」と。そして「『動き』に見合った図面を描かなければならない」とも。

 

家は動きません。でも暮らす人たちは常に動いています。移動するという大きな動き、ある場所での立ち振る舞い、さらにひとつひとつの所作と、動きのスケールにも色々あって、それぞれが気持ちよくおこなえるのが、いい家なんですね。

 

氏はその色んなスケールの動きを検討するのに、それぞれに違うスケールの図面でそれに対応するのだ、そう主張しています。それは単なる「見た目だけ」の建築とは次元の違う、人の暮らしを中心に考えられた住宅の姿です。

 

そんな風に考えられつつ描かれた図面たち、そしてその完成図が一緒に載っているのは、まさに著者の色んなスケールでの検討の連続と、そしてその全てが結晶化した「練り上げられた空間」とを一緒に味わえるということなんですね。

 

ちなみにこの本、著者も書いていますが、私のようなプロだけでなく、これから建築を目指したい若者や、家づくりに興味のある一般の方々にも充分楽しめる内容だと思います。

 

家づくりを考え始めつつこの本を味わってみれば、いわゆる「図面を読む」ということが、すんなりと身につくかもしれません。それほどの魅力をもつ、家づくりの楽しさを伝えてくれる良書であります。