地と図と用と

2015.1.22|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

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ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は大事な所用で、めずらしく難波を訪れました。せっかくですからその後、高島屋で開催されていた『用の美とこころ 民藝展』をのぞいてきたんです。

 

「民藝」という言葉をご存知でない方もおられるかもしれません。これは「民衆的工藝」の略語です。80年ほど前、柳宗悦というひとが起こした運動であるそれは、日本各地の無名の職人たちがつくり出す「実用品」の中に真の美を見るという、まさに「眼の転換」でした。

 

「用の美」というのは、まさに実用品の中にある巧まざる美を指す言葉です。柳が推進した民芸運動で見出された日本の素晴らしい「用の美」、その流れを継承した器や家具、織物などが今回は展示販売されていました。

 

私もその意匠に惚れ込んで購入し、日々の「事務所ごはん」に使っている瀬戸本業窯の「馬の目皿」も無論ありましたし、他にも「倉敷手織緞通」、「松本民藝家具」、「益子焼」、「型染」などなど、本当にたくさんの「暮らしの中の美」をもつ品々がたっぷりと。

 

冒頭の写真は、今回の展示のプレスリリース用の画像です。今日の会場はたくさんの人出で、とても写真を撮れる感じではなかったので、この画像を拝借して使わせていただきました。

 

でも、それと同時に、私にはこの写真たちが今の時代の「民藝」のあり方を表しているように思えるのです。80年前と今の違いをふまえて、今の暮らしの中で活かされるあり方を。

 

私たちものづくり、デザインに絡む世界に生きている者が「民藝」と聞いて思い浮かぶのは、おそらく「濃い」ということでしょう。デザインの要素がとても濃密にできていて、強く主張をしている感じです。

 

なので、今日の展示販売会場では、そういうものがズラッと並んでいるわけなので、すごく濃いデザイン的エネルギーを発しているのですね。それに圧倒されて、ひとつひとつのモノのもつ「味」がわかりにくくなってしまわないか、そう感じたほどでした。

 

でも、実際の暮らしの場面の中で、全てがそんなデザイン的濃密さをもつわけではない。シンプル・イズ・ベストが今はインテリアの主流でしょうし、北欧家具なども人気ですから。

 

そういった風潮の中でのうまい使い方、民藝のエネルギーを上手に活かすようなモノの取り揃え方を、冒頭の写真は示しているように思うのですね。シンプルなインテリアの中の、素敵なアクセントとして。

 

「地と図」という言葉があります。ある絵と、それが描かれる画面というような感じですね。「民藝」という言葉で称されるモノたちは、うまく「図」として使うことで、シンプルな「地」の中で、それは美しく映える。

 

だから、ずらりと民藝の家具や器を並べてしまうのは、あまりよくないと思うのです。あくまでもその「用」を重んじながら、自分の暮らしという「地」に、どうその「図」の良さを取り込んで輝かせるのか。それが選ぶ側の眼の試されるところではないでしょうか。

 

事務所に戻って、冒頭の写真のように馬の目皿をふたつ出してきて眺めました。やはりとても美しく、強いチカラをもっている。私にとって民藝とは、地と図、雅と詫び、密と疎、といったことを思い描きながら、上手に暮らしに取り込んでいきたいモノたちですね。