天才というミステリー

2015.7.17|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2015-07-17 15.16.48

『すべてがFになる』   森博嗣 著   講談社文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

私もたまにはミステリーを読むのです。どこかの書評で「ちりばめられた伏線の効果が素晴らしい」なんて書いてあったのと、これは著者のデビュー作で、その後築いていく「理系ミステリー」というジャンルの始まりを告げる金字塔、という評価にも、食指が動いたのでした。

 

この小説は昨年、テレビドラマ化されたのだそうですね。しかし発表はもう20年近く前のようです。タイトル「すべてがFになる」という言葉も何だか気になりつつ読み始めましたが、これはいわゆる「密室殺人」のミステリー、でした。

 

舞台設定からして物々しい。「十代で両親を殺害したという天才工学博士・真賀田四季が住む孤島の研究所」なのです。その島へキャンプに来たN大工学部建築学科の犀川創平助教授、そしてその生徒の西之園萌絵が、事件に出くわす。

 

ずっと一人で隔離されて生きている人間と、その天賦の才能で動いている研究所。ミステリーをあまり読まない私にも、これが非常に特殊な設定だとは感じられます。コンピュータシステムで管理された世界で、起こるはずのない殺人事件がおこる。

 

私は犀川助教授が勤めるのと同じ工学部建築学科を出ていますので、やはり理系であると言えるでしょう。でも、やっぱり途中で「わかった!」とはなりませんでした。非常に緻密な、そして常人の考えることではない壮大な仕掛けが、最後にわかります。

 

ネタバレはいけませんが、普通とは違うミステリー「殺されたのは誰なのか」ということが大きな鍵であり、そしてやはり「すべてがFになる」という言葉の意味が、この事件の真相をあらわしている。

 

読了してみて初めてわかるのは、確かに、冒頭のシーンも、途中何気なく出てくる会話も、真相へ至る道への伏線になっている、ということです。なるほどなあ。どこかの書評は正しかったなあ。そう感じました。

 

ううむ、ミステリーの書評というのは難しいですね。でも、デビュー作でこの緻密さと完成度というのは、やはりすごい。やはり「そのスジのヒト」でなければ書けなかった物語でしょう。

 

最後に、これから本書を読んでみようという方に、ご注意を。登場人物に感情移入して物語を楽しむ、というタイプの方、いわゆる「共感型」の読書をする方には、本書はお薦め出来ません。

 

まずそういう人物が出てこないからですが、何と言っても主人公・真賀田四季博士の「普通でなさ」は凄まじい。本書は、そうした天才というミステリーを楽しめる人にお薦めしたい、ある意味一風変わった一冊だと言えるでしょう。