季節を抜けて帰る

2014.5.18|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

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ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日も、「ベテラン木想家」のご紹介をしたいと思います。先日お伺いした中で、また別の木の家。こちらも先日ブログで書いた山小屋風の家と同じ築12年の木想家で、こちらは高槻市内にあるお宅です。

 

家そのものもとてもいい感じで年輪を刻んでいるのですが、なんといってもこのお宅で素晴らしいのは、その建物まわりのお庭です。たくさんの樹々や草花が茂り、まるでここだけ田舎の一軒家のような風情を醸し出していました。

 

家の南側のお庭には、家を覆い隠すような大きなミモザの木があって、遠くから見ても家の姿がよくわかりません。竣工当時は、木の面格子が印象的なその外観を「蕎麦屋のような」と形容していた私でしたが、それももう、緑の奥に隠れてしまっていますね。

 

そして、冒頭の写真は、門を入ってから玄関までの、このお宅のアプローチです。なんとも言えずよい感じではありませんか。両側には金木犀や銀杏、オリーブなど多くの木が茂り、足元にも色んな草花が植えられています。

 

アプローチには段差があるので、階段をしつらえていますが、これは枕木の階段。年月を経て、古美たよい味わいが感じられます。この家ができた頃は、このような本物の枕木がまだありました。昨今は、とても手に入りにくくなっていますね。

 

そして樹々の向こうにちらりと見えているのが、玄関の引戸です。これも12年の時の重みを身に纏って、とてもいい感じ。もはやアンティークのような雰囲気すら感じられるほどですよ。

 

ちゃんと整えたお庭、というのではなく、とても自然な感じのままに育った樹々と草花。今は萌える緑が最高に美しい時期ですが、植わっている樹種から見て、このアプローチの道行には四季折々に、花や紅葉や樹の実が迎えてくれることでしょう。

 

そんな季節ごとの風情を感じながら、樹々が織りなす風景の中を、少しカーブを描きながらアプローチを歩き、玄関に至る。そして引戸をカラカラと開けて、中へ。敷地に入ってから家に至るまでの、なんと贅沢な時間でしょうか。

 

家に入るまでの時間も、大事な暮らしの一部です。出来て12年、この「季節を抜けて帰るアプローチ」は、私たちつくり手と、住まい手の丹精と、そして時間との素晴らしい共作として今、存在しているんですね。

 

年月を経た家を訪ね、そんな共作がうまくいったのを体感することは、つくり手のこの上ない幸福の時間なんです。先日もそれを感じることができたことに、感謝ですね。