想い出のたてもの

2014.11.11|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2014-11-11 09.13.04

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は久しぶりに三宮を訪れました。しばし息抜きと目の保養、ということで、最近親しくなった方々と、神戸市立博物館の「古代エジプト展」を観に行ってきたんです。

 

とても素晴らしい展示で、久しぶりに古代文明を堪能してきましたが、そのことはまた別稿に譲るとして、今日はその近くにある、ある建物のことを書かせてください。

 

冒頭の写真がそれ。市立博物館の少し北側にある建物で、兵庫県信用保証協会の本所ビルです。この建物、KJWORKSに入る前に勤めていた株式会社昭和設計で、私が設計担当をさせていただいたビルなんです。

 

竣工してもう20年近く。今日は早めに行って、またこの建物の前に立ちました。今も当時と変わらない外観で、美しく使ってくださっているのが嬉しいですね。なんといっても、私にとっては非常に思い出深い建築ですから。

 

設計を担当していた当時、私は26歳くらいだったと思います。上司の大先輩が、このビルに関してはかなり色んなことを、何も知らない若造に任せてくださって、本当に一心不乱に色んなところのデザインやディテールに取り組むことができました。

 

そして現場監理の担当の先輩からは、その甘さや至らなさを色々と教えてもらいました。でも、それでもなんとか若輩者が一所懸命に考えたかたちを実現しようとしてくださいました。

 

今から思えば、本当に恥ずかしいことの連続でした。それがこのような立派な建物としてかたちになったのは、その二人の大先輩のお陰です。その御恩を、違うジャンルの志事になった今も、この建物を見るたびに想います。

 

そして極めつけの思い出は、あの阪神大震災です。あの時、このビルは建設の途中でした。構造体は無事だったものの、取付けられた、あるいは施工予定だった石材などの資材はみな破壊され、すごい惨状になっていたんです。

 

しかし、そもそも震災後に現場を訪れることができたのも、ずいぶんと後のこと。とにかく交通手段がなく、行くことすらできなかったあの時の気持ちは、被災された方々への思いと共に、今も忘れられません。

 

そんな色んなことを私に経験させてくれたこのビルを、今日また久しぶりにしげしげと眺めました。当時のことを思い出し、しばし感慨にふけっていた次第。

 

あのころ、わからないなりに全力で建築に取り組んでいたあの熱意を失ってはいないか。自分を導いてくださった先輩方の御恩に今、よき志事で応えることができているのか。見るたび、そんなことを自問させてくれます。

 

そして、設計者のその至らなさも、熱意も、かたちになって残っていく「建築」という志事。その重みもあらためて教えてくれます。KJWORKSの志事とはずいぶん違いますが、私にとっては特別な、想い出のたてものなんです。