愛着のデザイン
ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。
今日は、昨日のブログに書いた「蕪(かぶら)」からの連想で、最近私がとみに感心したデザインのことを。まあ、冒頭の写真を見れば、私が書きたいことは何となくご推測いただけるかと思います…。
これ、蕪ではなく大根ですね(笑)。先日、ある店で「関東煮(かんとだき)」をいただいていたのです。最近は大阪でも「おでん」と呼ばれることが多くなりましたが。京風のおでんとは違っていたので、関東煮と書きたくて。
よく味のしゅんだ(染みた)大根。それを4つに切って客に出す。そこに「ずらし」というひと工夫が施されていますね。これが出てきた時、私は思わず声を上げてしまい、そしてしみじみ感心したのでした。
ほんのそれだけのことなのですが、この大根の一皿は、とても上品で美しい。そして、さらに美味しそうに感じられます。角の「面取り」も効いていますね。いや、関東煮がこんなに品よく出せるとは。もちろん、味も抜群でしたよ。
素敵なデザインって、私はこういうものではないかと思うのです。奇を衒った派手なもの、非日常的な、異質なこと、いわゆる「とんがった」こと、そんなものばかりがデザインではない、と。何だか、そういうものが多くありませんか?
何かを魅せつけるものではなく、ほんの日常のちょっとしたことを、少し工夫すること。少しだけ、変えてみること。でもそれが、人間の感覚に染み付いた「あたり前」「常識」というベールを鮮やかにめくってくれる。そんなデザイン。
自分自身も、できればそういう志事をしたいな、そう思います。木という人に近い、人が慣れ親しんだ素材を使って、安心できる形をつくっていきながら、そこに少し「ワクワク」を盛り込めたらいいですね。
日々の暮らしが営まれる「家」に、奇抜はいらないはず。色んな考え方があると思いますが、私はそう思います。家だけでなく、いわゆるロングライフデザインと呼ばれるものには概して、この大根の一皿に通じるものがあると感じます。
ほんのちょっとした工夫が、そのモノへの愛着をより深くしてくれる、そんなデザイン。永く使っていただけるモノをご提供したい私に、とてもためになる関東煮の一皿だったのでした。