手の復活

2014.8.2|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2014-08-02 12.57.26

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は志事の合間を縫って、ちょっと梅田の阪急百貨店へと寄ってきました。前々から一度目にし、手にしてみたかった、念願の「器」と出逢うためです。そして、そのつくり手とも。

 

8月5日までの間、阪急うめだ本店・7階美術画廊にて開催されているのは、『瀬戸本業窯 七代・八代 水野半次郎 作陶展』です。そのテーマは「くらしに咲く花」。

 

瀬戸本業窯は、瀬戸市に江戸時代から続く窯元さん。そしてその当主は、代々水野半次郎を名乗っておられます。本業窯とは「本業焼き」の窯のことで、それは鎌倉の御世から続く、瀬戸本来の手仕事による陶器づくりのことだそうです。

 

現当主が七代目、そして後継は八代目。今回はお二人が瀬戸から大阪へとお見えになっていたんです。実は私、八代目とは以前からFacebookで「友達」でして、でもお会いするのは初めて。その日々の活動に共感していた水野さん、そしてその作品たちと、ついにご対面です。

 

冒頭の写真は、その展示の様子。300年の歴史を今も守り続ける七代・八代親子の作品たちが並んでいます。黄瀬戸、三彩など、どれも味わい深いものばかり。そして八代目から、年月を経た器を比べつつ「器が育つ」ことの実際もご説明いただきました。

 

中でも私が前々から気になっていたのは、この写真の中央左側に並ぶ、ぐるぐると目のような模様が描かれた皿です。これを「馬の目皿」と言って、瀬戸では古くからある伝統的な文様だそうです。

 

しかし、その文様はしばらく廃れてしまっていました。何故かというと、描くひとがいなくなったから。馬の目にしても、麦藁手と呼ばれる線の文様にしても、誰でも描けるものではなく、限られた専門職の志事なのですよ。

 

ひとがいなくなり、技術の後継が出来ず、見られなくなった文様。それを本業窯の皆さんが復活されたのが、今回展示されている「現代の馬の目皿」というわけなんです。

 

私はそのドラマを知って、この馬の目皿に会いたいとずっと思っていました。今日対面を果たし、八代目から丁寧なご説明を聞いて、なおさらその伝統の復活劇に感銘を受けた次第。

 

馬の目皿の新たな「手」をつくりあげるのに、およそ一万枚の皿を描いたと言います。すごいですね。文様の復活はイコール、職人の「手」の復活だということが、文様のタッチを見て、とても腑に落ちたのでした。

 

「伝統技術の衰退」は、木の家づくりも含め、ものづくりのどの業界にも共通する問題です。KJWORKSでも、「刻み」などの技術の継承を視野に入れて活動していますが、違う「ものづくり」でも同様の課題は多いはず。

 

しかし、一度廃れたものを甦らせるのは、継承よりもなお難しい。水野さんの説明を聞き、器をじっくり拝見して、それを成し遂げた本業窯の「伝統を背負い、後世に繋げる」という想いを熱く感じられた、意義深い時間でした。

 

なお、この馬の目皿、呉須と茶の二種類の七寸半の皿が、KJ阪神事務所へやってきます。伝統の文様をどう使うか、ちょっとプレッシャーですね(笑)。

 

※今回水野さんに特別に許可を得て展示を撮らせていただきましたが、本来は撮影不可とのことでした。