山椒は小粒で

2013.10.18|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

網代

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

昨日、夕方からKJWORKS京都の事務所にお邪魔してきました。かねてより、「リフォームしたから一度来てな」と言われていたんですね。ようやく訪問することが出来たという次第。

 

事務所のリフォーム、なかなか綺麗に出来ていました。京都の得意な左官の仕事なども、色々と工夫をこらしてあって楽しめたのですが、私の目を一番惹いたのは、冒頭の写真の部分でした。

 

これは「網代天井(あじろてんじょう)」ですね。数寄屋建築などによく使われるもので、以前にも一度このブログでご紹介したことがあります。しかもこの写真のものは、かなり本格的な、昔ながらの匠の技を使ってつくられた「ホンモノ」だったんです。

 

網代というのは、薄い板を編んで構成したものです。斜めに編んだものや、このように「市松」に編んだものがありますが、昔ながらの技というのは、この編まれた「薄い板」をつくる技術のことを指しています。

 

この板は「へぎ板」と言って、木を割って、割って、割って、薄くしていってつくるんですよ。木の繊維を壊さないように、手で割って厚み1ミリ以下にもっていくのですが、それを可能にするためには、大変な技術が必要です。

 

安いものでは、木を機械で「桂剥き(かつらむき)」にしたものが使われたりするそうですが、いやあ、本物はやはり全然その味わいが違います。それがこの天井でよくわかりました。桂剥きとでは、木目が全然違いますもんね。

 

技だけでなく、使われる木も、どんなものでもいいわけではありません。主に木曽の天然木、それも樹齢数百年で木目の詰まったものでないと、美しいへぎ板に出来ないのだとか。すごく希少なものだと言えます。

 

この天井に使われた木は「ネズコ」という木。ただ、へぎ板の世界ではネズコのことを「黒部」というそうですが。少し色が濃く、木目の濃い部分(冬目)が美しいラインになっていますね。これが年月を経るとさらに浮き上がって味わいが増すそうですよ。

 

もっと白い板となる「椹(サワラ)」を使ったりもするし、サワラとネズコで濃い薄いの市松模様にしたりと、色々な方法がこの網代天井にはあるということでした。

 

匠の技で割ってつくられたネズコのへぎ板は、表面がまっ平らではないので、なんとも言えないランダムな光の反射の仕方をし、それがまたとても美しいのです。これはかんなで削った板とはまた別の美しさですね。

 

そんなすごい手間のかかった網代天井、私はしばし見惚れてしまったのですが、実はこれ、新装成った京都事務所の、トイレの天井なんです(笑)。

 

結構なコストがかかるので、小部屋に使ったという見方もあるでしょうが、でも、この天井にしていることで、このトイレは非常に格が上がるというか、リッチな感じに溢れていました。来られるお客さまにも、きっとインパクト大ですね!

 

少ない面積ながら、素敵な「技ありの天井」。山椒は小粒でピリッと辛く、新しい京都の事務所をうまく飾ってくれていました。ピリッとした良い仕事を見るのは、やはり嬉しいものですね。