技術の検証、視点の検証

2013.8.1|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は、木材の「高性能化」に向けて一途に技術開発されている会社、越井木材株式会社さんへ、工場見学にご訪問させていただきました。普段使っている無垢の木材とはまた少し違った、いわゆる「エンジニアリングウッド」の世界を垣間見てきた次第です。

 

現在、国の方針としても「国産材を公共建築に使っていく」ということが大きな方針として出されています。しかし、私たちKJWORKSがつくっている木造一戸建ての建物とは違って、公共性の高い施設、あるいは大きな建物には、それに比例してさまざまな法的規制がかかってくるものです。

 

それは主に防火性能、そして将来に向けた高耐久性といったものですが、越井木材さんは、そのような公共建築にも採用可能な防火木材、あるいは高耐久性木材を開発しておられるんですね。

 

それは例えば、高温の水蒸気を用いて木材の特性をよりよく変化させる「サーモウッド」という技術、あるいは「燃えない木材」をつくるための「不燃化技術」など、さまざまな特殊技術です。普段はそのままの木材を使っている我々にとって、そういう世界を垣間見るのは、「その極北を知る」意味で、とてもためになりました。

 

それぞれの特殊技術もとてもすごかったのですが、私が今日もっとも感心したのは、その特殊技術の性能を検証するための様々な試験をしておられる部署でした。強度や変形の性能を見る物性試験から始まり、高耐久性を検査するための化学試験、そして生物学的な試験まで、おこなわれていたんです。

 

冒頭の写真は、その「生物学的試験」の様子です。様々な加工を施された木材が、小さな試験体となって並び、その出番をまっています。そして画面中程右のガラス容器には、木材を腐らせてしまう働きをする、いわゆる「腐朽菌」がたくさん培養されていました。

 

このガラス容器に、特殊技術によって高性能化された木材のチップを入れ、実際に腐朽菌に対してどの程度の耐性をもつのか、時間をかけて実験する、というわけなんです。すごい、そこまでやるんですね。

 

他にも、実際にシロアリを大量に飼って育てている実験室もありました。特殊木材がどの程度シロアリに強いか、それは実際に食ってもらって、というわけです。いやあ、その徹底ぶりには驚きです。

 

このような数多くの試験による検証を経てはじめて、特殊技術はその効用を認められ、世に出ていくんですね。今日はなんだか、同じ木を扱っていても、かなり違うものを視ている会社の「ものづくり」を見ることができて、とてもためになりました。

 

「無垢の木が一番」という台詞を、木の家が大好きな私たちはつい口にしてしまいがちです。それは何も悪いことではありませんが、もう少し視点を広げてみた時、本当に我々人類にとって大切なこととは、無垢の木だけを使うことではないことに、思い至ります。

 

グローバルに、あるいはロングタイムスパンで考えた時、大切なこととは、「再生可能な材料である木材の再評価」「日本の森林資源の有効活用」、そして、それによる「木材の活用拡大によるCO2固定の拡大」といったもの、である筈ですよね。

 

そこまで「引いて」木材にまつわる事情を見た時、公共建築でさえも使用可能な木材開発という越井木材さんの大きなビジョンは、非常に大切なことをやっておられる隣人として、私達の目に写ってくるのです。

 

今日は、少し違った視点で木材を扱っている企業さんの取り組みを見て、少し「近眼」になりかけている自分に気づきました。このようにしっかりとした検証を経て実用化されている特殊技術を、視点を広げて取り込むことも時には大切だと、腑に落ちて感じられたのでした。

 

自分の視野とは、日々の惰性によってすぐに狭窄への道を走りがちです。そのことも、「少し違うもの」を見ることによる検証が、時々必要なのだ、ということなのでしょうね。