江戸と上方の味

2013.10.6|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

『みをつくし料理帖 八朔の雪』  高田 郁 著  ハルキ文庫

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家の暮らしプロデューサー、山口です。

 

関西と関東、同じものが扱われていても、その中身に大きな違いがある、ということがよくありますね。先日私は、家の地鎮祭での道具の使われ方が、関西と関東で全く逆である、ということを、この業界に身をおいて15年、初めて知ったのでした。

 

食文化の世界でも、それはたくさんあるのですね。例えば「きつねそば」。例えば「桜餅」。例えば鰻の裂き方。例えば「関東炊き」。などなど。普段あたり前に食べているものが、所変われば全く違うものになっている、ということが。

 

地鎮祭の道具の使われ方でショックを受けて以来、関西と関東のそういう違いというのが妙に気になりだした私、その流れでついゲットしてしまったのが、本書です。この時代小説は、それぞれの話を通じて関西と関東の食文化の違いが浮き彫りになるという、今の私の興味のツボに、もってこいの一冊なのです。

 

「みをつくし料理帖」というタイトル。主人公の名は澪(みお)。上方(関西)で料理の修行をした彼女が、江戸の料理屋で、ちゃきちゃきの江戸っ子の店主とともに料理の腕をふるい、客との関係、日々の暮らしの中で何かを掴みとっていく、という主題をもった連作ですね。

 

ここでも、上方と江戸の食文化の違いがひとつの大きなテーマになっています。今の関西と関東ではなく、上方と江戸の違いです。時代考証を含めて練られたその一話一話には、何とも言えない説得力と、そして食べることが大好きな人々を誘う、不思議な魅力にあふれています。

 

食文化の違い、そのギャップに戸惑いながらも、その持ち前の根性で、店の看板となる新しいメニューを開発していく澪の姿。そこには、地域性を読み取り、その奥にある人の本質に迫らんばかりの彼女の一途な情熱が溢れ、それは徐々にこちらにも伝染してくるように感じられてなりません。

 

人の心に訴えかけるものをつくる。そのためには何が大切なのか。読み進むうち、こちらも「創意工夫」という大事なエネルギーをもらったような気がする、そんな素敵な一冊なのです。