浪花商人のくらし

2013.10.24|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2013-10-23 15.32.47

 

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

冒頭の写真、古い街並みですね。模型かな?と思われるかもしれませんが、これは実物大。しかも江戸時代、天保の頃の「大坂」の街並みが、本物の材料を使って、当時の工法で再現されたものなんですよ。

 

昨日は、夕方から少し私用でお時間をいただいていたので、ちょっとだけ、天神橋筋六丁目にある「住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館」へ寄ってみたんです。用事のついでに知人を案内するというのが名目でしたが、実は私も行くのは初めて。

 

住まい情報センターという大きな建物の8~10階に「くらしの今昔館」はあります。冒頭の写真の街並みは、大きなビルの吹き抜け空間の中に、実際の建物として復元されているんです。よく見ると、天井がドームになっていて、両側からライティングがされているのが見えますね。

 

入って最初にこの、街並み全体を見渡せる場所に出ます。そこで始まる口上は、おお、桂米朝師匠ではありませんか(笑)。全体を俯瞰しつつ、この情景の説明を聞いたら、次はいよいよ街並みの中へ。

 

風呂屋、人形屋、唐物屋(からものや)、本屋、薬屋などが軒を連ね、建物の細部だけでなく、商品までもきっちりと並べられています。天保の頃の大坂の商家のつくりもよくわかり、店の中に入って客の気分を味わったりもできます。裏長屋には、走り(流し)やへっついさん、生活道具なども色々とあって、楽しめました。

 

私が一番感心したのは、本物の木造建築として建てられているこれらの建物が、ちゃんと「古びて」いること。パンフレットによると「エイジング:人がそこに住んでいたという雰囲気を出すために、各町家は建築年数を設定し経過年数に応じて汚れなどを演出」とあります。

 

木材などはちゃんと「浮造り(うづくり)」になっています。浮造りとは、木が古くなると木目が凸凹に浮き出た感じになっているもの。ビルの中の建物が古びているのは何だか変な感じでしたが、時を経た街並みの雰囲気づくりには、絶大な効果があるように感じられました。

 

天保の当時の大坂は、江戸以上に防火都市になっていたそうです。全て瓦屋根で、2階の壁の両端には、延焼を防ぐため漆喰塗りの袖壁が設けられていました。それがまた、街並みの意匠になっているんですね。屋根の鬼瓦なども、実際に北船場で使われていたものを再利用しているとか。

 

ひょんなことから少しの時間を過ごしただけでしたが、かなり面白い場所でした。それは、私が建築を志事にしているから、というだけではなく、電気もガスもない昔の人の暮らしがある程度見えてくるレベルまで、つくりこまれていたからでしょう。

 

いつの時代も、衣食住が人間に必要なことは変わりません。でも、時代が変われば、それは大きく違う。対極にある側から自分を見てみる、ということもたまに経験すると、目線がもう一度新鮮さを取り戻すという点で、意義深いですね。

 

180年ほど前の浪花の商人の暮らしぶり、その気分を少し味わえたのは、現代における「エコで自然な暮らし」に興味がある私にとって、なかなかエキサイティングな経験だったのでした。