温故知新の天井

2013.7.21|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は豊中のSmさんの家をお借りして、「お引渡し前の木の家を見る会」が開催されました。その様子は安本くん他参加スタッフのブログに譲ることにして、私の方は今日の会場となったSmさんの家の、とても素敵な場所についてご紹介しましょう。

 

冒頭の写真がその場所。白い壁、白い天井の部屋ですが、天井の一部が段違いになった、いわゆる「掘り込み」という形になっています。その掘り込み部分の天井仕上げは、ネズコという木の薄い板を編んだ、いわゆる「網代天井(あじろてんじょう)」というものですね。

 

網代天井というのは、茶室の天井としてよく使われたりする、伝統的な和風の仕上げです。それがこの場所では、部屋全体ではなく一部分だけに使われ、さらにその両側に一見相反するデザイン要素であるスポットライトを配したことで、何とも言えないモダンな感じに変貌していました。

 

デザイン要素としてだけではなく、実は別の効果も考えられています。この場所、実はグランドピアノが入る「音楽室」なんです。奥に見える窓も、外部への防音の意味で、大きさも控えめな防音サッシが設置されているんですよ。

 

音楽室の壁天井を全て石膏ボードにローラー漆喰で仕上げてしまうと、音響効果として硬くなるはず。そこで、一部吸音効果のある材料としても、この網代編みの天井が提案されたということでした。

 

なるほど。デザインの面でも、音響効果の面でも、空間に変化を与えるものとして、この伝統的な素材である網代天井が使われたというわけだったんですね。いいですね。

 

上記でわかる通り、これは私の提案ではありません。このSmさんの家のプランは、元は私が考えましたが、その後色々な変遷を経て、今のプランになっています。そのプランの変化や実施設計の中で、安本くん、松尾くんからこのようなアイデアが出たのでしょう。

 

デザインと音響、二つの面を考慮した上で、「古くからあるものに新しい息吹を与える」ような温故知新のデザインが、お客さまの家にご提案され、このように美しく実現したことに、今日は感心し、そしてとっても嬉しくなったのでした。

 

「デザインとは引用である」という言葉もありますが、古来より伝わる木造建築の伝統、その中には私たちにインスピレーションを与えてくれるデザインボキャブラリーが、まだまだ無尽蔵にあるはずです。

 

お客さまのご要望に応じて、それらを上手く提案に盛り込んでいくことができたら、それは設計者自身の大きな糧(かて)となるに違いありません。今日はそんなことを、モダンな網代天井を見ながら想った次第です。