焼きものと電気

2013.10.4|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

先日、池田からの帰りにちょっと立ち寄らせていただいたリフォームの現場。ずいぶんと古いお宅で、仕上げを解体した建物の中には、やはり独特の雰囲気が漂っていました。

 

その屋根の裏側を見上げて、うわあ、野地板がほんまの板や、なんて。野地板というのは屋根の下地板で、昨今はほとんどが構造用パネルを使います。でも昔はその名の通り、板だったわけですよね。

 

そして、その野地板や垂木、梁や柱に、何やら白いポツポツが見えていますよ。白い出っ張りが、あちこちにたくさんくっついています。そしてその周りには細い線がまとわりついて、張り巡らされていますね。

 

いまはちょっとレトロブームですから、ご存じの方も多いかと思います。この白いものは碍子(がいし)ですね。そしてまとわりつき、張り巡らされているのは、電気の配線です。

 

電気の配線というものは、今の木造住宅では、このようなものを使わずに、直接木の構造に留めつけられたり、木材を貫通したりしています。しかし、昔はこのような「碍子引き配線」が普通でした。それは昭和30年代くらいまでのこと、だったんですね。

 

碍子というものは「磁器」という焼き物です。いわゆるセラミックですね。その「電気を通さない」特性を活かして、このように配線の支持をするために使われたというわけです。

 

では、なぜ今は住宅では碍子が使われないのでしょうか?それは、配線がビニールで被覆されるようになったからです。昔は電気の線というのは、布で巻かれていたんですよ。ですから他のものに触れて漏電しないよう、碍子を使って「空中に浮かせて」配線していく必要があったんですね。

 

技術的には必要のなくなった、住宅の電気配線用の碍子。でもその焼き物の肌の風合いに惹かれたり、またレトロなその感じが良いと、いわば装飾的に碍子引き配線をする方も、昨今はちょこちょこあるようです。

 

私もこのリフォームの現場で、久しぶりにこれほどまでの大量の碍子を見ました。昔はあたり前だったとは言うものの、今はなかなか見られませんから。すごいなあ、なんて感心したりして。

 

今は古民家再生など、古い建物をリフォームによって復活させて住む、ということが段々普通になってきている時代だと思います。そんな建物に、単なるレトロ趣味だけでなく、なんとも言えない風合いをもつ磁器の碍子をつかって、「魅せる配線」というのは、よく似合いそう。

 

段々とそれを専門にする業者さんなども表れ、碍子引き配線の美しい施工法も追求されたりしていると、先日何かのニュースで聞いたところだったこともあり、この現場を見て、ますます一度やってみたくなっている私だったのでした。

 

ちなみに、住宅用ではすっかり廃れてしまっていますが、碍子そのものは、まだまだ街中に溢れているんですよ。電柱や、高圧線の鉄塔の上の方を、見てみて下さい。電車のパンタグラフにも、そこへの送電線にも、よく見るとあちこちに「白いパーツ」が使われているはずです。変電所などは、碍子だらけだったりします(笑)。

 

セラミックで上手に絶縁しながら、電気を送るという技術は、広くあまねく普及しているものなのですね。ただ、住宅規模では、ビニル被覆の細い電線で充分用が足りるようになったという、それだけのことなのでした。

 

ものの「質感」を大事にしたいKJWORKSでは、ビニル被覆よりも、磁器の風合いが好みです。なんか非常にもったいないことをしている、そんな思いが頭をよぎったりも、するのであります。