知らないからこその言葉

2013.5.15|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

「男のオバサン」、永六輔さんの本です。氏が25年間毎日続けておられたラジオ番組「誰かとどこかで」で放送し、反響のあった市井人の言葉を集めた本、なのだそうです。文庫版の初版が1990年ですから、最近のものではありません。

 

でも、それでもこの中に集められた「普通の人達」が発する名言、箴言の数々は、何かやはり心に響くものがあるんです。それは、永六輔さんとの会話の中で生まれた、本当に飾り気の無い、素のままの言葉だからなのかもしれませんね。

 

私たちKJWORKSが関わる「木造」というもの、あるいは「建築」「林業」というものについての言葉もいくつもありました。例えば…。

 

・「山笑う・山眠るっていう季語があるでしょう。そんなふうに山を人格化してきた民族だと思うと、どうしていま、山をあれたままにしているか…。淋しいもんです」

・「うちの宿も、違法建築ということで廃業することになりました。違法ということなんだそうですが、五代、140年続けてきて、いまさら違法と言われてもねぇ、消防法がなかった頃に建てたんですから」

・「たとえば法隆寺のそばに、新築で再現した新法隆寺を建ててあるといいと思うね。古くなって良くなる部分と、新しいから良いという部分が、ハッキリしてくると思うんだ」

 

わかっている人、その道のプロだからこそ、実は見えていないこと。そういう部分を、こんな「素人さん」の言葉は、時にするどく突いてきますね。この本を読み、自分の志事に関係のある言葉を味わって、そう思います。

 

私も日々の志事の中で、お客さまからの言葉にはっとすることがあります。自分が知らず知らずのうちに、客観的な物の見方を失いかけている、それに気づかされることがあるんです。

 

いわゆる有名人、その道の達人からは逆に生まれ得ない言葉。知らないからこそ見えるもの。そういう言葉を堪能できるという意味で、とてもためになる本であります。

 

最後に私が思わず唸った言葉を。いわゆる「ホームレス」の方の言葉です。

「名誉や、地位は捨てられるんですよ。出世欲だって、性欲だって、なんとか捨てられるものです。物欲、もちろん、捨てられます。

一番むずかしいのは、名前です。

名前を捨てることができたら、プロの乞食になれます。そういうものです。」