石積みのまちへ

2013.11.27|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

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ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日はお休みをいただいて、私用にて滋賀方面へ行っておりました。用事の帰り、ある街へ立ち寄ってきたんです。そこは比叡山延暦寺の門前町であった歴史ある街、大津市の坂本です。

 

今日の坂本の街は、美しく紅葉した樹々に彩られていました。ちょうど良い時に訪れたと喜んでいたのですが、でも私が見たかったものは、紅葉だけではありません。それは「石垣」だったんです。

 

坂本は、石を積み上げて石垣などをつくるプロフェッショナルである「石工」の集団が居た街なんですね。その出身地の地名をとって、その石工集団は「穴太衆(あのうしゅう)」と呼ばれています。街のあちこちに、穴太衆による仕事のあとが残っていて、それは素晴らしいものなのです。

 

冒頭の写真もそのひとつ。坂本に多くある「里坊(さとぼう)」と呼ばれる延暦寺の老僧のための住居、そして普通の民家にも、穴太衆による石垣が設けられています。その特色は、自然石をそのまま加工せず積み上げていること。「野面積み(のづらづみ)」という呼び名もあります。

 

しかし、穴太衆による野面積みには、特別の技法が凝らされ、その堅牢さは他に比類の無いものだそうです。その匠の技で積まれた石垣にだけは、「穴太衆積み」という呼称が用いられるのだとか。賞賛を込めた特別の呼び名、というわけですね。

 

確かに、今日見て回った石垣は、どれも一見なんということのない、むしろ荒い感じのもの。しかし、嵌めこまれたほんの小さな石すら触ってもびくともしない、完璧なバランスによってつくられていました。

 

調べてみると、どうもその秘密は「積む石の重みの掛け方」にあるようです。穴太衆積みの石は、その表面から石の奥行きの1/3のところに重力がかかるように設計されているのだとか。しかし、書くのは簡単ですが、実際に大きさの違う石を積んでいきながらそれを実現することは、恐るべき高度な技術をもってこそなし得るものだと想像できますね。

 

他にも、石垣の奥に栗石の層、その奥には小石の層と、順に重ねられた層によって排水効率を高め、土が水で膨張して崩壊に至るのを防ぐ工夫もあるとか。資料に「目に見えない部分に穴太積みならではの技が潜んでおり、それが何百年の風雪に耐えうる堅牢さを生み出している」との記述を見つけましたよ。

 

なるほど、やはりそうでした。私たちがつくっている木の家も同じことで、出来上がったら見えなくなるところ、基礎の中の鉄筋や、壁の中の断熱材、外壁の下の通気層など、それらをしっかりとつくり上げることで、家の性能を高め、そして家の寿命を延ばすことができる、そう考えています。

 

穴太衆の仕事も、同じ想いで成されていたんですね。見えないところに高い技術をもちいた石垣だからこそ、一見粗野な雰囲気の中に、なんとも言えない力のバランス、均衡の美しさを湛えているのでしょう。

 

古の石工集団の素晴らしい仕事を惚れぼれとして眺めつつ、自分の仕事ととても共通しているように思えるその「技の使い方、考え方」に、大いに勇気づけられました。とても実りある時間が過ごせた、晩秋の街歩きだったのでした。