花が醸す香味

2014.6.3|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

hanakoubo

東京農大花酵母研究会HP

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日は、お酒の話です。先日飲んだ日本酒から、その奥深さをまた知ることができたので、少しそのことを。

 

日本酒とは、米が「発酵」してつくられるもの。発酵のメカニズムを簡単に言うと、「麹菌(コウジカビ)」が米のデンプン質をブドウ糖に変え、そして「酵母」がそのブドウ糖をアルコールに変える仕組みのことです。

 

麹菌はなんとなくわかりますが、それと並んで酒造りに重要なその「酵母」とは何でしょう?私も不勉強でしたが、酵母はレモンのような形状をした約5~10ミクロンほどの大きさの微生物なんですね。そして非常に多種多様なものがある。酵母を「イースト」とも呼ぶ、と言えばなんとなくイメージが湧きますでしょうか。

 

そして、どの酵母を使って酒をつくるかによって、その酒の味は違ってきますし、「香り」が大きく違ってくるのだそうです。それは、酵母がおこなう発酵の代謝産物である「香味成分」が、酵母によって違うからです。

 

そんなことを私が調べようと思ったのは、先日買った日本酒のラベルに「花酵母」と書いてあったから。そしてその酒を飲むと、花のような香りがしたから、なんです。その酒の名は「天吹」。佐賀の酒でした。

 

「花酵母」を名乗る以上、それは一般的に日本酒づくりに使われている酵母とは少し違ったものであるはず。そのなんとも言えない香りに魅せられた私の好奇心に火が付いた、というわけです(笑)。

 

調べてみて辿り着いたのが、冒頭の写真がトップページになっている東京農大花酵母研究会HPでした。好きなものには一所懸命になるのが人の常ですね(笑)。そこにはこうありました。

 

東京農大酒類学研究室(略称)では、無限の可能性を秘めた自然界に着目し、個性豊かで特徴ある酵母を分離することを試みました。その結果、自然界に咲く花々から様々な香味を醸し出す優良酵母を分離することに成功しました。まさに、花からの贈り物というべき天然の酵母です。

 

なるほど、従来酒造りに使われている酵母ではなく、新たに自然界から採取された、それも花々から分離された酵母のことを「花酵母」と呼んでいたんですね。

 

私が飲んだ「天吹」には、「マリーゴールド酵母を使用」との文字があり、オレンジ色の鮮やかな花にあやかってか、酒のラベルもオレンジ色でした。そしてそのHPによると、驚くなかれ、コスモスやツツジ、カーネーション、シャクナゲなどなど、14種類もの花酵母があるというではありませんか。

 

花の蜜の中に住み、その香りをつくりだしている酵母を、酒造りに利用する。その技術の確立で、今までにはなかった新たな香りや味をもつ日本酒が生み出されるようになったのですね。花酵母は、分離に成功してからまだ10年だそうです。

 

実は私が日本酒を嗜むようになり、色んな日本酒を飲んでみて一番不思議に思っていたのが、この香りでした。ワインという葡萄からつくる酒ならなんとなくイメージできる。でもなぜ米からつくる酒に、このように多種多様な香りが生じるのか。ほんとうに甘いリンゴの香りのする酒などを飲むと、不思議で仕方ありませんでした。

 

今回この「花酵母」を知り、その意味を調べてみて、あらためて「発酵」というもののメカニズム、そこに「酵母」が果たす役割の大きさを知りました。そして、酒造りが人と微生物との共同作業である、ということも。

 

飲むほどに、知るほどに深い、酒造りの世界。でも、知らずに飲むより、その違いの理由(わけ)を知って飲みたい。これからの私の酒選びの基準に、「どんな酵母?」が加わることは必至なのであります。