「かたち」の理由

2013.8.24|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

今日はお客さまに「住まいの提案」をさせていただきました。建て替えのご計画についての「プラン第1案」のご提案で、図面と概算見積書を提出し、そのコンセプトとそれぞれの間取りの内容、建物の姿、そして断面構成などを、ご説明してきました。

 

冒頭の絵は、その間取りのラフスケッチ段階のものです。お客さまの個人情報と関わるため、ぼんやりとしかお見せできませんが、それでも建物の形が真四角でないことは、見て取れるかと思います。この複雑な形が、この敷地に建つこの家の、最大のポイントなんですよ。

 

もちろん、いつもこんな真四角でない、いびつな形の間取りをご提案しているわけではありません。でも今回は、色々検討した結果、この形がこの敷地とご家族に最もフィットするという判断でした。その理由は主に2つ。

 

ひとつは、「最高の眺めの確保」です。高台にあるこの敷地から、最も眺めのいいのは南南東の方角。でも、今建っている家は、敷地の形に合わせているため、その方角に向いていません。でも、できれば建物全体がその眺めを最大限に活かせるよう、その方向に向いていてほしい、敷地を最初に見た時、そう感じたんです。

 

そしてもうひとつは、「庭を楽しめる形」です。今ある、奥様が丹精込めてつくってこられた素敵なお庭を、できるだけ変えないで済むように建物配置を考え、そしてさらに、庭に面する部屋が雁行(がんこう、ギザギザの形になること)することによって、どの場所からも違ったお庭の見え方、楽しみ方が出来るように考えました。

 

自画自賛はいけませんが、このちょっと複雑な平面形によって、そのどちらもかなりうまく達成できていると思っています。そのことを今日、お客さまに熱弁を振るってきたという次第。

 

建物の平面形がどんな形がよいのか、それは敷地の形、敷地周辺の環境、そしてお客さまの暮らしのあり方によって、常に変動します。真四角のほうがよい場合もあるし、L形、T形、凸形、凹形などなど、可能性は無限にあります。

 

しかし、私たち家づくり工務店、あるいは設計者は、その中からひとつを選び、お客さまにご提案するのが志事。その際に「なぜこの形がいいのか」を、しっかりとご説明できなければいけません。「これがカッコいいから」では、ダメなんです。

 

その家から、何が見たいのか。暮らしの中で、その家に取り込みたいものは何か。例えば陽の光や風、そして素晴らしい眺望など、それは色々あります。また、逆に遮りたいものもあるはずですね。

 

さらに、部屋と部屋は、どのようにつながっているのがいいのか。単なるワンルームか、コーナー別れしつつつながる空間か。上下階のつながりはどうか。そんなことも、間取り、形に大きく影響します。

 

そう、家の間取り、家の形は、お客さまがそこで営む「暮らし」に形を与えることに他ならないのですね。いい加減に決めては、罰が当たります。とことん論理的に考えつつ、何回も何回も手を動かして、納得できるかたちを探り続けてはじめて、論理と感覚が一致した「かたち」が現れる。私はそう思っています。

 

コンセプトと実際の形、間取りとがよくマッチしている「かたち」であれば、自分自身も納得して心からその良さをお客さまにご説明できますし、それはきっと、お客さまにもよく響くに違いありませんね。

 

今日のこのちょっと複雑な「かたち」の木想家も、すごい量の下描きの山を築いて、この形に辿り着きました。ですから、きっとその良さ、そのかたちの中にある「芯」の部分が、お客さまにも通じたはず。

 

そう心から信じられる「かたち」を得ることが出来て、本当によかった。いま心地よい疲れとともに、そうしみじみ思っているのです。