雨上がりの蕾

2014.5.28|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

2014-05-27 07.16.02

 

ご愛読、ありがとうございます。KJWORKS・木の家のくらしプロデューサー、山口です。

 

昨日のことになりますが、前日の雨が上がった朝、自宅の玄関を出ると、白い花が咲く準備をしていました。先日「白く飾る樹々」と題して書いたのとはまた別の、白い花。南天ですね。

 

たしか去年も書いたような気がしますが、私はこの南天、花が咲く前のこの蕾の形がとても好きです。シャープでもあり優しい丸みもあり、何とも言えない自然の造形ではありませんか。葉にも雨の雫が玉になって、さらに美しい。

 

おお、今年もまたこの季節か。そう感じ、しばしその形を愛でてから、南天のことを色々と思い浮かべつつ家を出たのです。家づくりにも関係がある、南天にまつわる話をすこし書いてみましょう。

 

私の家の門扉を入ったところにあるこの南天、方位としては敷地の鬼門(北東)の方角です。選んだ時に自分がそれを意識していたわけではないのですが、鬼門や裏鬼門(南西)に南天を植えることは、よくあることです。

 

それは、南天の読み「なんてん」が、「難を転ずる」に通じるから。南天は縁起の良い木なんです。さらにここに福寿草を加えて植え、「災い転じて福となす」というように縁起をかつぐこともあるようですよ。

 

でも、「難を転ずる」は単なる語呂合わせの迷信だとも言い切れません。というのは、蕾とともに美しい「南天の葉」は薬になるからです。そのまま「南天葉(なんてんよう)」という生薬になって、解熱や鎮咳の作用があると言います。

 

葉が薬になるのは、そこにほんの少しではありますが、シアン化水素という劇薬が含まれているからだそうです。このごくわずかの薬が、葉に「防腐剤」の役割ももたせてくれているのだとか。なるほど、お弁当などに南天の葉が入っているのは、単なる彩りではないんですね。

 

この南天、秋には真っ赤な実をつけます。緑の葉も美しく、白い花も可憐で、赤い実も目を楽しませてくれる。どれも我々日本人の好みに合い、鑑賞する対象としてこれほど贅沢な植物はあまりありませんね。「和風」を象徴するアイコンになっている感すらあります。

 

ご多分に漏れず、私もこの南天を見るたびに惚れ惚れするものの一人です。鬼門のことなどはあまり関係なく、ただその美しい姿を毎年眺めて楽しんでいるのですが、それも今年で10年ですね。

 

この春は、あえて自宅廻りの色んな樹々のことを書いているんです。家の前と後ろにあるほんの小さな土のスペースですが、でもやっぱり、樹々や草花に季節を感じるという暮らしは大切にしたいもの。

 

夏に向けて、私にとっての白い花の季節は、もう少し続きそうです。

 

※ちなみに南天の話をもうひとつ。南天の赤い実は、活け花にしてもとても長持ちし、ずっと枝に残っているそうです。ここからの連想で、酒の席で真っ赤になって、でもいつまでも帰らない人のことを「南天」というのだそうですよ(笑)。