憧れの逆輸入

2017.8.23|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 KJWORKS

 

〈写真は法隆寺。建築文化も含め、日本を再発見するような番組を最近観ています。〉

 

 

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

最近、あるテレビ番組をよく観ています。観ているといっても私の場合はYou Tubeで空き時間に、なんですが。その番組は『世界!ニッポン行きたい人応援団』といって、その名の通り日本に行きたい外国人の方を応援する、というもの。

 

 

 

何を応援するかというと、日本文化のあるジャンルにとても興味をもっている方に、その憧れの文化を実際に来日して体験してもらう、それを応援するという趣向なんです。これがなかなか面白い。企画としても、実際のその体験の旅も。

 

 

 

日本文化と一言で言っても色々ありますが、私が観たもので言うと、社寺や古民家と言った建築モノ、組子細工やからくり人形などの工芸品モノ、浮世絵や墨絵などのアートモノ、饂飩や蒲鉾などの食文化モノ。どれも非常に面白いのです。

 

 

 

お国もアメリカ、フランス、ポーランド、ウルグアイと本当にさまざま。それぞれの日本文化について海の向こうで「本場に憧れる」人が居る、ということ自体が驚きですが、皆さん本当に一所懸命に勉強されている、それにまた一驚。

 

 

 

観ていて思うのは、たぶん20代の私なら「なんで外国人やねん、まずは日本人が体験しろよ」と感じただろうなあ、と。でも今の私には「まだ見ぬ異文化に憧れる」という心情もわかる気がします。近くより遠くが良く見えることが。

 

 

 

日本の伝統文化は、後継者問題などで厳しい状況にあるものも多いという認識もあり、なんとかそれらを存続させていかねば、という気持ちもありますが、しかし当事者の立場になれば、徒弟制などの慣習に馴染めないのも理解は出来る。

 

 

 

そして、海外から来て憧れていた日本文化の真髄に触れて感激する人々の姿。テレビ的にはとても絵になるものだし、本人には本当に素晴らしい経験でしょう。ただしそれは本当に「旅」であり、その道で生きることとは違いますよね。

 

 

 

実際のところ、歳月を経て研ぎ澄まされた伝統文化は、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、その修業の道に入る以前に、その「道」があることすら知らない人々が大多数、というのが今の日本の実態ではないでしょうか。

 

 

 

その意味で、このテレビ番組は私たち日本人にとって、「灯台下暗し」であった自国文化の再発見であり、かつ異国の眼から見たものとしての「憧れの日本」を知り、一度他の国を経由して「憧れ」を逆輸入するような試みであるのかも。

 

 

 

単に伝統文化や技術の薀蓄を語る番組より、こうして「憧れ」だったものを実際に体験するという人の姿を媒介としてその憧れの日本文化を紹介するという趣向は、とっつきやすくわかりやすい。そして一緒に感心し、誇らしくもある。

 

 

 

どの国にも素晴らしい文化はある。しかし本当に悲しいことは、その文化が滅びていくこと以上に、それが人々の知識や記憶から消えていく、ということではないでしょうか。そしてそれには、近くにあるが故に見えにくい、という面も。

 

 

 

海外の方の「憧れ」を共に体験することで、自国の素晴らしい文化の存在に気づく。こういう逆輸入の方式を考えた人は偉いですね。人が何かに興味を深める時に必ず起こる共感や共鳴といった心の響き、それは国籍を問いませんから。