緩和とあぶなさ

2017.9.11|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 KJWORKS

 

〈階段についての法規制が、昨今の転用改修をふまえて緩和されました。〉

 

 

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

今日は建築関係のニュースから採り上げた話題です。これが朗報なのかどうかは色んな意見があると思いますが、まずは皆さまに知っていただきたくて。それは「階段の勾配が急な方へ規制緩和された」という話。ちょっと「?」ですよね。

 

 

 

国土交通省が8日、階段の「蹴上げ」と「踏み面」の寸法を定める基準を見直す、と発表しました。この基準が今までよりも「急な階段」になるという見直し。そして、これが規制緩和になるのは、リフォームにおける話だからなんです。

 

 

 

蹴上げと踏み面、おわかりになりますでしょうか。蹴上げとは階段の段差寸法のこと、踏み面とは階段の水平面の奥行寸法のことです。蹴上げが大きく、踏み面が小さい階段は急で、蹴上げが小さく、踏み面が大きい階段は緩いというわけ。

 

 

 

そして建築基準法施行令23条1項には、建物の用途・規模によって蹴上げ・踏み面寸法の規定があります。その中で「シェアハウス」や「高齢者向けグループホーム」の場合には、蹴上げ22cm以下、踏み面21cm以上、が基準でした。

 

 

 

一方で、最近は既存の戸建住宅をシェアハウスや高齢者グループホームにするという用途変更リフォームが増えている。これは「空き家」問題の解消にも意味があることですが、ここでネックになるのが「急な階段」なのですね。

 

 

 

「階段なんて架け替えたらいい」と感じた方も多いかと思いますが、ことはそう簡単ではないんです。階段とは一種の「吹抜け」という穴ですから、穴がそのままで階段だけが緩くなると、上がる時に穴の角で頭を打つことになる。

 

 

 

構造上その穴も広げることができるならよいのですが、2階の床に空いた穴の大きさの変更は難しい場合が多いですね。つくった大工さんはそれを想定していませんから。ということで、階段がネックで改修できない物件が多くなる。

 

 

 

今回の規制緩和は、そうした現状を鑑みて同令告示を改正するというものなのでした。改正案では「蹴上げ23cm以下」、「踏み面19cm以上」となるそうです。ただし「両側手摺設置」と「滑らない踏み面」が義務付けになる、と。

 

 

 

今日の冒頭の写真は、以前に古民家の蔵をリフォームさせていただいた時に設けたもの。2階は蔵の骨組みを見せた寝室で、とてもよい雰囲気の空間です。これもだいぶ急な階段でしたが、住宅は比較的規制が緩いので問題はない。

 

 

 

ところがそれをシェアハウスやグループホームに用途変更すると規制の数字が変わってアウトになるんですね。私には今回の改正は、建物の転用を推進したい想いと、危険性を考慮したい想いの間でなんとか着地したという数字に見えます。

 

 

 

しかし、シェアハウスはともかく、高齢者向けグループホームなどでは、本来階段というのは出来るだけ緩い勾配でつくるべきもののはず。建物の中での「上下移動」の場である階段は、どうしても事故の危険性が高くなる場所ですし。

 

 

 

思うに私たち設計者は、こうした法規制の最新情報を把握することから、「規制に適合すればよい」のではない、との想いを新たにしないといけませんね。法的基準とは最低限の基準であり、より良きものを目指すスタートなのですから。