木組みの純度

2017.9.19|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 KJWORKS

 

〈海外で出来上がった素晴らしい木造事例、これが日本でも実現する日を願います。〉

 

 

 

ご愛読、ありがとうございます。木の家づくり・暮らしのプロデューサー、山口です。

 

 

 

この連休は台風で大変でしたね。被害にあわれた地域の皆さんには、一日も早く元のように安心して暮らせますことを心よりお祈りいたします。私の周囲は幸い影響も少なく、普通に志事し、生活できておりました。ありがたいことです。

 

 

 

今日はその連休に読んた本について書きます。『日経アーキテクチュアSelection 世界の木造デザイン』という、雑誌『日経アーキテクチュア』の関連記事をまとめたムック的な本。いつもの書評ブログより専門的になることはご容赦を。

 

 

 

その雑誌はもう読んでいません。でもいま「大規模木造」なる建築物が徐々に出来てきていることは知っていますし、政府がそれを後押ししているということも。自分も保育園という施設を手がけるようになって、余計に気になるんですね。

 

 

 

「国内外の注目作を徹底リポート」と謳うとおり、数多の興味深い事例が載っています。日本で木構造に力を入れている建築家の作や、海外の先端的な事例、国内で新分野を切り拓いている事例も。それぞれに違った解があるのが面白い。

 

 

 

冒頭の写真は、本書で私が最も惹かれた建物です。スイスはチューリッヒにある「タメディア新本社」、設計者は坂茂氏。「紙管構造」での仮設住宅で知られた、木構造にも積極的な方です。しかしその作の中でもこれは異例ではないか。

 

 

 

7階建て、延床1万㎡ほどのオフィスビルですが、これが全て木造。それはこの本に載っているのだから当然かもしれませんが、この建物が特異なのは、いわゆる構造金物がつかわれておらず、日本で言う「木組み」だけで出来ていること。

 

 

 

こう書くと「木造って皆そうじゃないの?」と感じる方も多いでしょう。しかし実際には木構造と言いつつも、柱と梁など部材の接合部には特殊な金物が使われるのが普通ですし、さらに言えば木造と鉄骨造のハイブリッド構造の方が多い。

 

 

 

そこがKJWORKSがつくる「木の家」との大きな違いで、大規模になればなるほどさまざまな規制がかかって、純粋な木造がしにくい状況にある、というのが実状でしょう。しかしスイスではこういうことが出来る、それが驚きでした。

 

 

 

これが実際の接合部の拡大写真。先の写真でもその特殊な形状が印象的で、なんだか昔遊んだ遊具のような柔らかな雰囲気をもっていますね。曲線を主体にして、梁などは断面が楕円形になっている。その発想の柔軟さが楽しいのです。

 

 

 

記事には構造設計をされたヘルマン・ブルーマー氏のインタビューも載っていました。やはりスイスでもここまで木造を徹底させたビルは初めてだろう、とのこと。そしてこの構法で「20階までは可能だろう」とも。いや、すごいですね。

 

 

 

そして、その後に続く設計者・坂茂氏のインタビューを読んで、私は大いにうなずき、かつ正直なところ暗澹たる気持ちになったのでした。そこにはこう書かれていたからです。「ガラパゴス化する日本の木造」と。以下少し引用です。

 

 

 

「戦後、日本は木造建築を一気にやめてしまいました。加えて、燃えしろに燃え止まりを設けるような合理的でない法規がある。(中略)日本は必要のない制限によって、木造技術をガラパゴス化させてきたように思います。」

 

 

 

そう、私が感心し、これは自分もつくってみたいと感じた先のタメディア本社のような「純度の高い木造」は、まだ日本では望むべくもないレベルのものなんです。法隆寺や東大寺のような偉大な純木造建築を伝統としてもつ日本が、何故?

 

 

 

それを「ことなかれ主義」と言ってしまえばそれまでですが、こうした「木組み」の技術が形を変えながらも海外で素晴らしい事例に結実していることは、その伝統を知る日本人として評価しつつも一方でとても悔しい気持ちになります。

 

 

 

木とRC、木と鉄骨の組合せを「ハイブリッド」と言えば聞こえは良いですが、しかし「木を木で締める」ということがもつ意義は実に大きい。東大寺大仏殿をつくりうる技術が活かせない今の状況がいずれ打破されることを願うばかりです。