単位の乗り換え

2011.6.5|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

ヤード・ポンド法

 

いつもお読みいただきありがとうございます。

 

この世界地図、ほんの数ヶ国にだけ、赤い色が付いています。その中には、アメリカ合衆国も入っていますね。世界的に見ればかなりの少数派ということになるこれらの赤い国々は、他となにが違うのでしょうか?

 

実はこの地図は、「単位」の違いを表した地図なんです。ほとんどの国が採用している「メートル法」を、これらの数ヶ国はまだ使っていない、ということを表現しています。

 

アメリカ合衆国ではメートル法じゃないの?と思われる方もおられるかと思いますが、アメリカではまだまだ「ヤード・ポンド法」が主流です。インチ、フィート、ヤード、マイルという長さの単位、オンス、ポンドという重さの単位を使う方式ですね。

 

ミリメートル、センチメートル、メートル、キロメートル。グラム、キログラム、トン。いわゆるメートル法単位系では、全てが10進法で決められていますので、とてもわかりやすいですね。でも、ヤード・ポンド法では、10進法はありません。メートル法と比べると、かなり面倒なわかりにくい単位系だと言えます。

 

例えば、長さの一番小さな単位は1インチ=2.54cmです。しかし、10インチが次の単位の1フィート=30.48cmにはならなくて、1フィートは12インチなんです。また、重さの一番小さな単位は1オンス=28.35gですが、これも10ではなく16オンスでつぎの単位の1ポンド=4.536kgとなります。このように12進法と16進法が混在しているため、メートル法に慣れた頭には、複雑怪奇とすら思えるほどですね。

 

でも、アメリカ人の方々はそれを普通に使っていて、メートル法に乗り換えるつもりはないようです。その理由のひとつとして言われているのは、「アメリカ人は小数よりも分数が好き」ということ。アメリカでは、1より小さな端数を表すのに、「0.5」「0.1」などの小数よりも、「1/2」「1/4」「1/16」などの分数があらゆる場面で好んで使われるのだそうです。「クォーター(25セント)」という硬貨が存在しているのも、そういう「好み」だからなのだとか。なるほどねえ。

 

ちなみにこのヤード・ポンド法、以前はもっと多くの国が使っていました。ということは、メートル法に乗り換えた国が多々あるということですね。イギリスは「徐々に変えていく」方針で、今でも半々くらいで使われているそうです。逆にオーストラリアは、1970年に一気にメートル法へ変更したそうです。それって、どちらが迷惑なんでしょうね。小さな混乱が長く続くか、大混乱が短期間発生するか。

 

私たちの国、日本もメートル法へ乗り換えたクチです。以前は「尺貫法」でしたから。寸と尺は10倍、尺と間は6倍、これも単純な10進法ではありません。尺貫法とヤード・ポンド法との共通点は、「身体寸法を基準にしている」ということです。1フィートは足の寸法(Feetの単数形がFoot)で30.48㎝。インチInchはオンスOunceと同意語で「12分の1」という意味なのだとか。1インチは親指の横幅の長さ、マイルはラテン語の「1000歩」に由来する言葉だそうです。

 

そう考えると、世界で一番合理的な思考法をする人達が住む「訴訟大国」アメリカが、単位についてはいまだにこの「割り切れない」身体寸法を元にした単位系をずっと使っているというのは、何だか不思議な気がしてきますね。

 

切り替えに膨大なコストがかかる、ということもあるのでしょうが、それだけでは「割り切れない」、大切な理由がどこかにあるようにも感じられて、とても興味深い思いがします。