種の保存、種(たね)の保存

2011.10.22|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

Nordic Genetic Resource Center Seed Vials, Svalbard Global Seed Vault

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

何やら試験管に詰められた粒々のものたち。これは、様々な種類の植物の種なんです。

 

私たちは日頃そんなことを全く意識せずに生きていますが、現代は、生物が大量に絶滅している時代であると、70%もの生物学者が考えているそうです。これを「完新世絶滅」と言うそうで、完新世とは、約1万年前から現代まで。我々人類の時代です。

 

地球誕生からの長い長い時間の中で、何度か「大量絶滅」の時代がありました。このような、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅してしまう現象は、現代の完新世絶滅の前には、今から約6500万年前の白亜紀末に起こりました。そう、あの恐竜たちが一気に絶滅してしまった時代です。

 

生物学者達は、今がそれに匹敵する大量絶滅の時代だと、認識しているんですね。それはもちろん、我々人類が引き起こした現象、それ以外のなにものでもありません。

 

そんな時代に、もしかして将来訪れるかもしれない「植物の絶滅」を救うべく、写真のようなかたちで種子を保存している貯蔵庫が、実は世界各地にあるんです。植物はその生態上、動物よりもこのような方法で種の保存がしやすいのですね。

 

ここはそのひとつ、スヴァールバル種子貯蔵庫というところです。

 

スヴァールバル種子貯蔵庫は、ノルウェーのスピッツベルゲン島にあります。北極点から南に約1300キロ、という場所です。最大300万種の種子を保存可能な貯蔵庫に、現在は100カ国以上から集められた10,000種を超える種子標本が保存されているそうです。

 

この貯蔵庫、「保存の維持」を最大の目的とした施設です。そのため、将来の地球温暖化で海水面の上昇が起こっても影響がない場所、海抜約130mの、しかも岩盤の内部約120mという場所に存在しています。温度は摂氏マイナス18~20℃に保たれていて、万が一施設の冷却装置が故障した場合でも、この場所にある永久凍土層によって、常にマイナス4度を維持できる環境だとか。

 

これはまさに、植物のための「ノアの方舟」だ、私はそう思ったのでした。

 

しかし、恐竜の大絶滅が起こった白亜紀末、その前の三畳紀末、その前のペルム紀末、今まで起こってきた大量絶滅に、ある特定の種が引き起こしたものはありません。地球活動の変化による、あるいは小惑星の衝突による、気候変動がその主たる原因であったと言われます。

 

今我々の時代になって、ついに地球上のある種が他の種の大量絶滅を招くという、今までにない事態が起こったわけですね。

 

それは大変に恐ろしいことで、きっとそのうち何かしっぺ返しが来るであろうと私などは思うのですが、しかし、人類という種が引き起こした現象であるがゆえに、その同じ種がこのような「方舟」をつくり、それを何とか防ごうという努力もまたあり得るわけです。

 

地球の歴史上初めて、自分たちが引き起こしつつあるこの事態を何とか少しでも回避する。そのためのこのような活動が世界各地でおこなわれていることは、人類の良心の発露とも言うべき大変に意義深いことだし、同時に人類の義務でもあるのでしょうね。

 

私はこの貯蔵庫のことを知って、種(しゅ)という字が種(たね)と同じ字であることを、改めて思ったのでした。

 

ちなみにこのスヴァールバル種子貯蔵庫、その建設を主導したのは、あのビル・ゲイツ氏だそうです。