セミとケーブル

2011.11.14|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

クマゼミとNTT

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

ようやく秋が深まってきた今日この頃ですが、暑かったこの夏、実はそれにもまして熱い戦いがあったという話を知りましたので、季節外れを承知でちょっと採りあげます。

 

写真は、西日本で「セミ」といえばこれ、クマゼミです。とにかく体も大きく、声も大きいんです!この夏も彼らの大合唱が繰り広げられましたね。

 

さて、このセミが留まっている何か電線のようなもの。これは、NTT西日本の光ファイバーケーブルなんです。しかもよく見ると、ただ留まっているだけではなくて、セミのお尻の辺りから、何やら管が出ているでしょう?これ、メスのセミが、木の枝と間違えて、ケーブル内部に産卵している写真なんですね。

 

もう、冒頭の「熱い戦い」の意味に思い当たりましたでしょうか?そう、この「ケーブル内に産卵され、断線してしまう」被害についての、クマゼミとNTT西日本の戦いが、何年もの間続いていたそうなんです。なかなか一般には知られていないですよね。

 

この被害は平成11年頃から始まっていたということで、ピークの平成20年には約2000件もあったとか。せっかく敷設したケーブルをセミに断線させられてはたまりませんね。

 

NTTとしては何とかそれを防ごうと、まず平成16年、ケーブルの皮膜を厚くして対応し、被害を減らすことにひとまず成功したそうです。しかし、ケーブルの皮膜を厚くしたり、皮膜を硬くしたりするのは技術的に可能ですが、そうなると今後はケーブル開通工事の作業効率が非常に悪くなってしまうんですね。そうなると本末転倒になりかねません。

 

そこで、セミ被害の防止と工事効率のベストバランスを見出し、第3世代のケーブルを生み出すべく、NTT西日本の研究機関、NTT情報流通基盤総合研究所での、まさに「猛暑と戦う研究の日々」が続けられていたといいます。

 

研究は、「敵の生態を知る」意味で、大阪市内でクマゼミを捕獲するところから。毎日約60匹のクマゼミを捕まえ、実際にケーブルに産卵する様子を観察。そして、顕微鏡で0.1ミリメートル単位の刺し傷の深さを分析。その繰り返しの毎日だったそうです。しかも、セミの自然な産卵環境を維持するためには、冷房などはつけるわけにはいきません。毎日、酷暑と闘いながらの実験だったとか。

 

その非常な苦労の末、「産卵管でも傷つきにくい硬さに改良されたプラスチック系皮膜とし、さらにその最薄部の厚さを約0.4ミリメートルに保つ」ことによって、セミの産卵管がケーブルの心線に達することのない最新型のケーブルが完成をみました。汗と涙の結晶です!

 

現在は、NTT西日本エリアの光ファイバーケーブルのうち、既に9割以上がこの最新型になっているそうです。完成した21年以降、毎年夏にクマゼミの捕獲と観察が続けられましたが、今年の夏も最新型の被害はゼロ。素晴らしいですね。そしてこの夏、NTT西日本は、自信をもってクマゼミ対策を終了したそうです。

 

いや、まさに「プロジェクトX」を地でいく話ではありませんか。技術者達による「なんとしても自分たちのサービスを守る」という意地、そして矜持。私は元の話を読んで感動した次第です。

 

しかし、どんな仕事の分野にも、このような人知れずおこなわれている「戦い」、「技術革新」、「克服」の物語はあるのでしょうね。困難に立ち向かう元気をもらったような気がする、今日はそんなお話でした。