圓と元と円と

2012.3.16|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

「円」か「元」か

ご愛読、ありがとうございます。

 

先日、中国の紙幣を見る機会がありました。そこでふと気づいたのですが、中国の通貨単位は「元」であるはずなのに、紙幣には「圓」と印刷されているのですね。圓は円の旧字体です。おかしいな、人民元は本当は圓なのか?日本と同じなんでしょうか?

 

よくわからなくなって少し調べてみたら、色々と面白いことが出てきました。中国の元についても、そして日本の「円」についても。

 

まず中国の「圓」と「元」ですが、そもそも人民元という言い方自体、日本だけのもののようです。中国では人民幣とあらわされているとか。そして、圓と元はどちらも「Yuan」(ユアン)と発音するのですね。

 

「圓」が「元」になっていった事情としては、そのように発音が同じということ。そしてここがポイントですが、「元」は中国では古来より「貨幣」そのものを意味するものだったそうです。そんなことで「圓」を簡略化するのに「円」ではなく「元」が採用されたのではないか。諸説ある中で、こういう説もあるのだそうです。

 

ちなみに中国でも硬貨には「元」と書いてあります。要するに、どちらも中国人にとっては、「お金」という意味は同じなんですね。

 

そして日本の「円」。これにも面白い話が。「円」も、中国のように「元」になるはずだった!?と言うのです。

 

「円」が生まれたのは、明治時代初期。明治新政府にとっての急務であった「単位の統一」のひとつとして、明治4年(1871年)に「新貨条例」が制定され、「両・分・朱・文」という4進法の通貨単位を廃止し、「円・銭・厘」の10進法通貨単位に変えられました。

 

しかしその2年前、通貨政策を担当していた大隈重信によって、それまでの「両」に代えて最初に提案された単位名は「元」だったのだそうですね。「百銭ヲ以テ一元ト定メ……」との文書が残っているそうです。

 

それが結果的に、何故「円」になったのか。この理由にも諸説あり、円形の通貨だったからだとか、中国が「元」だったから同じのを避けた、という説もあるそうですが、まだその真相は判然としていないようですね。さらには、江戸末期には「両」を「円」と呼び習わしていた、という記述が残っていたりして、ますますわからなくなってしまいます。

 

この二つの話は別々に知ったことですが、合わせて考えると、どうも「圓」「元」「円」という言葉は、単位の名称というだけではなく、「お金」そのものを表すということにおいて、深い深いつながりがあるようですね。

 

つながりというよりも、それらは実は同じものである。漢字文化圏の民族は、それを心の深層で、古い古い記憶として知っているのかもしれません。私にはそんな気がしたのでした。

 

※ちなみに冒頭の写真は日銀の建物です。これを上空から見ると「円」の形になっているのですが、これは「あくまで偶然」(貨幣博物館)だそうです。本当かなあ。それも深層心理のなせる技だったりして!?