駅にあるハコ

2012.4.19|カテゴリー「日々の思い」|投稿者 山口敏広

駅の百葉箱

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

写真は、大阪市営地下鉄・御堂筋線の淀屋橋駅です。皆さんご存知でしたか、このホームに「百葉箱」があるのを。ここだけでなく、梅田駅や天王寺駅など、8ヶ所に設置されているんですよ。

 

私も以前から気にはなっていたんです。私が社会に出て地下鉄で通勤を始めたのが平成元年、その時には既にこのような古びた姿でありましたし、今も変わらずホームに鎮座ましましておられます、この百葉箱。

 

今回、そのことを取り上げた記事があったのでチェックしてみてびっくり。一番古いというこの淀屋橋駅の百葉箱は、なんと約80年も前のものなんだとか!

 

1934年(昭和9年)に最初の百葉箱が設置されて以来、大阪の地下鉄ではホームの温度、湿度を測り続け、記録に残し続けています。日本で最初の地下鉄は1927年に東京で開業し、1957年には名古屋でも開通しましたが、このようにホームに百葉箱を置いて、正確なデータを取り続けてきたのは、大阪の地下鉄だけだそうです。なんだか、ちょっと誇らしいような気持ちになります。

 

百葉箱というのは、温度計、湿度計をその内部に蔵し、その計測精度を上げるための安定的な環境をつくり出すためのシェルターだと言えます。駅のホームというのは、列車による強い風が吹いたりするため、ただ温湿度計を設置するだけでは駄目で、やはり百葉箱が必要だったのですね。

 

現在、この百葉箱の内部では、温湿度のデジタル計測器が自動でデータを記録しています。職員による改修は半年に1回だそうですが、3年前までは温度計、湿度計ともにアナログ式で、週に1回データを回収していたとか。それを75年続けていたわけです!

 

そして、この計測データはホームの温湿度環境に問題が生じた時、その威力を発揮してきたそうです。夏のホームの温度がある時点から急上昇した時などは、換気や空調といった対策を講じるために、この計測データの存在が不可欠なものであったと。まさに、継続は力なり、ということを感じる話ですね。

 

しかし、残念ながらこの百葉箱、今年ついにその役割を終え、姿を消すのだそうです。理由は、以前から併用していた天井づけのセンサーなどの精度が徐々に向上してきたから。今まではそれでも百葉箱データのほうが正確だったのが、ついに逆転するようになったから、だそうです。

 

この夏から、徐々に撤去されるとのこと。センサー類によって今後もデータ計測は続けられるというものの、何だかとても寂しいことですね。

 

長らく駅のホームに佇み、何だか物思いにふけっているように見えていた、あの百葉箱…。今回は、その存在を誇らしくも感じ、またその喪失に惜別の情をもよおしてしまう、そんな話なのでした。