節穴の新技法
ご愛読、ありがとうございます。
今日は、木材加工の面白い新技術を知ったので、少し採りあげます。
写真がそれ。木材の節穴のような窪みに、何やら流し込まれています。金属のようですね。「インゴット製法」と言う新しい技術なのだそうです。
確かに、今までこのような木材の腐れや節穴などの部分は、同じ木材をつかって埋めるというのが普通の方法でした。このインゴット製法では、その部分に、250~260度に熱したスズ合金を流し込みます。比較的低温で融解するスズの合金を使うことにより、木材の発火点は400~470度ですから、木を燃やさずに加工できる、というわけなんですね。
木材を同種の木で埋めた場合、やはりいかにも「穴を埋めた」という感じがしてしまうものです。それはこの製法でも同じなのでしょうが、しかしこの場合は、木と金属という異素材の組み合わせが、家具や木製小物のアクセントになって、何だか面白い感じに仕上がるといいます。
あえて違う素材を使うことで、デメリットをメリットに変える、という発想の転換があるのが、なかなか面白い。この製法に私は、日本に昔からある、ある技術を想起しました。それは、主に茶道具の焼きものに用いられる技法、「金継ぎ」です。
金継ぎとは、割れたり欠けたりした焼きものの修復技術です。割れた部分を漆で接着し、その繕った部分に金を装飾していくんですね。こんな感じです。
割れた部分に、金のラインが入る。面白いのは、このラインがうまくできると、「器の景色がよくなった」と言って、割れる前よりも良いとされることがあるんですね。なかなか奥深い技法なのです。
今回のこの「インゴット製法」に、私はこの金継ぎに通じる可能性を感じました。ただ金属を詰めるだけでなくて、その部分がアクセントや面白い模様として扱われ、損傷ではなく、「景色」として評価されるというような。
木材が「穴が開いている、欠けている」という理由で廃棄されることも防ぐことができますから、エコなことでもあり、さらに穴埋めの形状の面白さが、付加価値を高めてくれる。
そんなことになれば、とても面白いし、素敵なことです。この新しい製法を活かした「工芸的技法」の発展があることを、とても期待してしまいますね。